先週、熊本県で開催された農業WEEKという展示会に参加していました。
これといった目当てがあったわけではないのですが、この2年ほど農業関係の展示会に行っていなかったので、情報収集と知り合いに出くわすのを楽しみに出かけました。
こうしたイベントは、できるだけ見に行くのがよいと思います。
ただ最新の情報を知るためなら、ネット上の情報で十分――というか、そのほうが早いです。
ではなんであえて展示会に行くのかと言えば、いろいろな目的がありえるでしょうが、私が大事にしているのは「人が何に注目しているかを知る」ことです。
人が一番注目するのは、一番優れたものとは限りません。
一番優れたものより、一番注目されるもののほうが売れます。
人が何に・なぜ注目するのかを知る機会として、そして、何が注目されないのかを知る機会として、展示会はちょうどよい機会です。
そういう視点で展示会に行くと、退屈することもありません。
同じような商材を扱っていても、人が集まるブースと集まらないブースがあります。
たとえば、鳥獣を避けるためのネット。
展示会では価格が大きく示されていることは少ないですし、一見したところでは性能の違いもよくわかりません。
それでも、ブースによって来場者数はかなり違いました。
こういう場面に出くわしたら、何が違うのかを考えてみます。
それらのブースを見比べてみて、「どれに入りたいか」と自問してみてください。
たいていの場合、自分が入りたくないと思ったブースは、他の人もあまり入っていないと思います。
その場合は「入りたくない」という自分の感覚を言葉にしてみるとよいです。
自分が入りたくないと思ったのに人が入っているブースがあれば、それはトレンドに気づくチャンスです。
自分には大したことがないと思われるのにたくさんの人が関心を示しているということは、そこに自分が気づいていないニーズがあるのかもしれません。
そのニーズを知るためにも、業界で話題になる可能性に備えるためにも、何が注目を受けているのか確認しておくとよいでしょう。
このようなとき、私はよく、カタログを見ながら(見ているふりをしながら)周りの人が出展者とどのような話をしているのかを聞きます。
自分が想像していなかった課題やニーズを部分的にでも知ることができて、参考になることがあります。
反対に、自分は立ち止まって見ているのに周りの人は関心を示していないブースがあれば、そのブースは何かしらの点でマーケティングに失敗しているのかもしれません。
自分が立ち止まったということは、その商品やコンテンツに何かしらの魅力はあるはずです。
その魅力がよほどニッチなものであれば話は別ですが、そうでなければ、人びとに気づいてもらうための工夫が足りないかもしれません。
たとえば、今回の展示会で、生分解性のネットを見つけました。
そんなものがあるとは知らず、私は立ち止まって出展者と10分ほど話をしたのですが、その間他には誰も立ち止まりませんでした。
そもそも生分解性ネットに関心がある人や、「なんだそれは?」といぶかしがる人が少ないのかもしれません。
仮にそうだとしても、他の商材も展示していたこのブースに一人も立ち止まらなかったということは、何かしらまずいところがあったのでしょう。
私の体験は以下のようなものでした。
- 「生分解性ネット」の文字が視界の片隅に入る
- ブースを通りすぎてから「この用途で使えないか」ということにふと思いあたる
- ブースの前へ戻って先ほど見た「生分解性ネット」の案内を探すが、角度が悪くて見つけるのに少し苦労する(見つけ直すまで、見間違いだったかもしれないと思う)
- どれが生分解性ネットか分からず、案内の前に置いてある白いものがそうではないかとは思うが、その手前にある黄色などの色付きのものも生分解性なのかどうかが分からない
- 出展者が声をかけてきたので詳しい話を聞く
- そのネットは(鳥獣害対策のネットと並べて置いてあったが)鳥獣害対策用ではないと知る
この体験から、生分解性ネットの見せかたに関して私が気になったのは以下のようなことです。
- 「生分解性ネット」と書かれたパネルが見えにくい
- 他のネットと一緒に置いてあり、どれが生分解性ネットなのか分かりにくい
- 生分解性ネットがどのような場面で役に立つのか示されていない
反対に、人が集まっているブースについても、その理由を自身の体験と周りの人の観察から考えてみると面白いです。
展示会は、何かしらの目的をもって行くものだと思います。
その目的の一つに、ニーズを観察するということを付け加えてみてはどうでしょうか。