新しい事業を始めるときにも、経営改善を図るときにも、よい目標を設定することから始めるべきです。
では、農業の経営指標の情報源には、どのようなものがあるでしょうか。
まず、一番手近なのはインターネット上の情報です。
探すときには、たとえばイチゴの経営指標を探しているなら、「イチゴ 経営指標」といったキーワードで検索をします。
すると、栃木県の「いちご新規参入経営支援マニュアル」や農林水産省の「農業経営指標一覧」といった資料が上位検索されました(2024年5月時点)。
このような国や産地の指標がまずは押さえておくべきものです。
ただし、同じ品目でも栽培方法や作型(栽培時期)によって売上も経費も大きく変わる可能性があるので注意が必要です。
国の指標は条件が異なる複数の環境のものをまとめた平均の場合が多いので、そのままでは目標設定や経営評価には使いづらいです。
特定の産地が提供している指標は、その産地と同じような環境・時期にて生産する場合はそのまま参考にしても問題ないかもしれませんが、そうでなければ注意が必要です。
いずれにせよ、指標は複数を比較しながら自社の環境と比べて、どれを参考にするか判断してください。
私のお勧めは、日本政策金融公庫の「農業経営動向分析結果」というものと、広島県の経営指標です。
「農業経営動向分析結果」は品目ごとにはなっていませんが、露地野菜、施設野菜、果樹などのグループごとに多数の経営体の決算情報をまとめているものなので、さまざまな指標の相場をつかむうえで有益です。
とくにこれから農業参入をしようとする場合は、この資料でどの領域に参入するか大まかなあたりをつけるとよいでしょう。
ただし、私はこれまで多くの農家・農業法人の決算資料を見てきましたが、「農業経営動向分析結果」の数字は実情との齟齬があるように感じます。
たとえば「農業経営動向分析結果」の売上高人件費率は多くの品目で30%台前半となっていますが、これは一般的な農業法人の値と比較すると小さすぎるように思います。
原因は、「農業経営動向分析結果」の数字が「平均」であるということにありそうです。
おそらく一部の大規模な農業法人の数字など、特異な値に引っ張られて、「平均値」と「中央値」がずれている(売上高人件費率の場合は、平均値のほうが中央値より低い)と考えます。
「農業経営動向分析結果」の指標は一般的な経営体の実績よりもよい、という前提で参考にしてみてください。
広島県の経営指標は、実際の農業経営体の数字をもとにしたもので、設備投資や材料・資材などの内容まで記載されているなど、ほかの自治体のものと比べて情報量が多いです。
掲載されている品目数が多いことも利点です。
ただし、あくまで広島県内の一経営体の数字なので、できればほかの指標と比べながら使用してください。
インターネット以外には、当然ですが本も有益な情報源です。
ただし、経営上の具体的な指標が載っているものは少ないため、どの本を選んでもよいというわけではありません。
私が勧めるのは『新 野菜つくりの実際第2版』というものです。
栽培の方法と併せて、大まかな経営指標が掲載されています。
もう一つ参考になるのは『農業技術大系』という農業の百科事典です。
大部であり紙のものを購入するのは実際的ではないので、図書館や「ルーラル電子図書館」というサービス(有料)で閲覧することになります。
古い情報も多いですが、毎年最新の情報が追加されており、優良な経営体の実際の数字を知ることができます。
情報や経験が少ないとどのような数字を目標とすべきか迷うものですが、まずは上記の資料からあたってみてください。