経営コンサルタントとして活動していて、しかも過去に海外営業の実務経験があることを伝えると、多くの方から輸出に関する相談を受けます。
その際、「英語ができないから輸出ができない」とため息をつく方が多いです。
確かに、英語ができることは輸出を進める上で大きなアドバンテージですが、流暢な英語を話す必要はありません。
英語ができないからと、海外の膨大なマーケットから目をそらすのは、実にもったいないことです。
英語力があるほうが海外とのビジネスをする上で有利なのは間違いありません。
しかし、旅行先でコミュニケーションが取れる程度の英語力があれば、ほとんどの業界において十分です。
海外への商品販売を大きく分けると、2つのステップがあります。
第一に、取引をまとめる商談の段階。
第二に、商品を輸出する物流の段階。
このうち商談の段階では、確かに英語ができるほうが、顧客に商品を適切に理解してもらえる可能性が高まるため、有利です。
しかし、一度商談が成立して、物流の段階に入れば、定型的な書類の作成とメールでのやり取りが主となるため、高い英語力は必要ありません。
メールのやり取りなら、いまはChatGPTがあれば十分にこなせます。
さて、商談の段階でどのくらいの英語力が必要かですが、英語の商品紹介資料をつくり、基本的な専門用語を覚えておきさえすれば、何とかなります。
英語力の有無が商談成立の分かれ目になるとしたら、あなたの商品と競合の商品に差がない場合だけです。
商品に十分な魅力があれば、あなたの会社に英語を流暢に話せる人材がいるかどうかは、顧客にとって大きな問題ではありません。
逆の立場になって考えてみてください。
あなたがイタリアから服を仕入れて販売しているとします。
一度仕入れができるようになってしまいさえすれば、そのイタリアの会社に日本語ができる人がいようがいまいが、商品の売れ行きには関係がありません。
海外営業の商談をまとめるには、顧客がその商品を自国で販売するイメージを掴ませることが最重要です。
それさえ達成できれば、英語の上手い下手は関係ありません。
それに、海外市場は日本に比べて何十倍もの規模があります。
たとえ英語力の問題で商談が成立しなかったとしても、他の取引先候補はいくらでもいます。
物流の段階に入ったら、大変なのはインボイスやパッキングリストといった輸出関連の書類のひな型をつくることと、社内で書類作成の役割を担う人の教育を行うことくらいです。
そこから先には、物流や通関などの手配をしてくれるフォワーダーというプロフェッショナルがいます。
彼らが助けてくれるので、たとえ書類に不備があっても、修正方法がわからないということはほとんどありません。
商談をまとめ、輸出書類の雛形をつくり、フォワーダーから協力を得られる体制を整えたら、海外への販売は自走します。
最初のステップが少し怖いかもしれませんが、一歩を踏み出してみてください。