事業家なら誰しも、どのような事業が利益をもたらすのかを見極めたいでしょう。
これは実際にはきわめて難しく、実際にやってみないと分からないものです。
事業を検討する上では、様々な観点から本当にその事業が求められているのかを見極めることが重要です。
ところで、事業を始めると言うと、何かしら世の中にないものを提供しなければならないという風に考えがちですが、実際にはありきたりな事業の方が成功する確率は高いと思います。
ありきたりな事業というのは、それだけ需要が大きいからありきたりなわけです。
まだ世の中にないものを社会に提供することは事業家の夢かもしれませんが、極めて難しいことです。
こうしたありきたりな事業で失敗をしないためには、需要と供給のバランスを見極めることが大事です。
そのために一つの目安となるのが「人口あたりの事業数」という考え方です。
コンビニが成り立つための人口
たとえば、コンビニエンスストアは2024年1月時点で日本に約56,500店舗ほどあるそうです。
一方で、日本の人口はおおよそ1億2,500万人です。
この2つの数字からコンビニ1店舗あたりの人口を計算すると、約2,200人となります。
つまり、平均的には2,200人の商圏があればコンビニが1店舗成り立っている、というわけです。
人口2万2,000人の町であれば、コンビニが10軒あっても不思議ではないということになります。
そこで、仮に人口10万人の市でコンビニのフランチャイズを検討しているとしたら、10万人を2,200で割って約45店舗ほどがその市内のコンビニの目安ということになります。
もし実際のコンビニの店舗数が50店舗あれば「競争が激しいからやめておこう」という判断になるでしょうし、もし30店舗であれば「まだ参入余地のある地区が多々あるのではないか」と想像できます。
他の要素の考慮
もちろん、実際にはコンビニの競合となるような、類似の商店やスーパーマーケット、ドラッグストアなどの数も考慮するべきでしょうが、やり方としては同様です。
「検討している事業の競合店舗が検討している地域にどのくらいあるか」「それは平均と比べて多いのか少ないのか」ということを考えるのが、事業を始めるにあたっての大事なステップとなります。
たとえば、ラーメン屋であればラーメン屋やその他の飲食店の1店舗あたりの人口を考えるべきですし、コンサルタントとして開業しようとしているなら、その地域のコンサルタントの数を平均と比較するべきです。
事業領域へのこだわりが強いなら、その事業の競合の少ない地域を探すという方向で検討すればよいです。
事業領域よりも地域にこだわりがあるのでしたら、参入を検討できるあらゆる事業について、その地域における人口と供給のバランスを調べてみるとよいでしょう。
もちろん、こうした需要と供給のバランスだけで事業が成功するというわけではありません。
しかし、ありきたりな事業であればあるほど、需要に対して供給が不足している事業・地域を選ぶことが大事です。
差別化が難しいとお考えでしたら、必ずこの計算はしてみてください。
まとめ
人口あたりの事業数を用いた参入余地の推測は、事業を始める際のリスクを減らすための有力な手段です。
具体的な事例として、コンビニエンスストアの数を用いた計算方法を紹介しましたが、他の業種にも応用可能です。
需要と供給のバランスを見極めることが、競争の激しい市場を避けることになりますし、ニーズに気づくきっかけともなります。