以下の文を理解できるでしょうか。
aɪ hæv ə drim ðæt wʌn deɪ ɑn ðə rɛd hɪlz ʌv ˈʤɔrʤə, ðə sʌnz ʌv ˈfɔrmər sleɪvz ænd ðə sʌnz ʌv ˈfɔrmər sleɪv ˈoʊnərz wɪl bi ˈeɪbəl tu sɪt daʊn təˈɡɛðər æt ðə ˈteɪbəl ʌv ˈbrʌðərˌhʊd.
「これは何語なのだろうか?」と思われたでしょうか。
これは、英語です。
発音記号で書かれた英語です。
マーティン・ルーサー・キングJrの有名な演説の一節で、書くと以下のようになります。
I have a dream that one day on the red hills of Georgia, the sons of former slaves and the sons of former slave owners will be able to sit down together at the table of brotherhood.
https://www.americanrhetoric.com/speeches/mlkihaveadream.htm
このように書かれていたら、多くの人が英語であると理解できるでしょうし、キング牧師の演説だと知っている人も多いでしょう。
それが発音記号になると、途端に分からなくなる。
さて、キング牧師の演説は、どのように発音されたのでしょうか?
当然、発音記号であらわされているような形で発音されています。
“I have a dream”と発音されたのではなく、”aɪ hæv ə drim”と発音されたのです。
“aɪ hæv ə drim”という発音記号を見て”I have a dream”と変換できなければ、もしかしたら、”aɪ hæv ə drim”という発音を聞いて”I have a dream”と言っているのだと理解できないかもしれません。
英語のリスニングや発音が苦手だという人は多いです(私も得意というわけではありません)。
その原因の一つは、そもそも英語にどのような発音があるのかを知らないから、ではないでしょうか。
たとえば、sheとseaの区別はつけられるでしょうか。
発音記号で書くとʃiとsiです。
sheはカタカナで書くとシの音で、seaはカタカナで書くとスィのような音です。
ʃとsの発音がどう違うのかを知らなくてもsheとseaを聞き分けられるようにはなるでしょうが、知っておけばより早く聞き分けられるようになるでしょうし、ほかの単語にも応用が利きます。
英語が(またほかの言語が)日本語と違う発音体系をもっている以上、カタカナで英語の発音を完全に表記することは不可能です。
分かりやすい例では、rとlの発音の違いをカタカナで表記することはできません。
また、英語は表記と発音の間に対応の厳密なルールがないので、表記を見ただけで発音を理解することもできません。
会話の中で英語の発音を学んでいくことはできますが、時間がかかります。
音声記号にもいくつかありますが、一般的に用いられるのはIPA (国際音声記号、International Phonetic Alphabet)と呼ばれるものです。
また、言語の発音についての学問は音声学と言います。
別の記事でも書きましたが、リスニングや発音のスキルを高めようと思ったら、発音記号(IPA)を学ぶことをお勧めします。
原理原則を押さえることが、習得への近道になります。
IPAの音声記号は一覧の表になっていて、International Phonetic Associationのウェブサイトからダウンロードできます。
なお、私が音声学を学んだのは小泉保氏の『音声学入門』という参考書です。
少し古いものですが、一つひとつの音の発音を丁寧に説明してくれています。
ただし、IPAはときどき改定されるので、より新しい参考書のほうがよいかもしれません。
また、英語にある発音に注力したい場合は英語音声学の参考書がよいでしょう。