前回、人事制度の基礎として能力主義、役割主義、成果主義の3つがあり、それぞれ倫理学の徳倫理学、義務論、功利主義との結びつきがある、ということを書きました。
人事制度にかかわらず、会社として「何を価値と考えるのか」を明確にしておくことは、組織が有機的に機能するうえで重要です。
今回は、続きとして、自身・自社の価値観を判定するための質問の例を紹介します。
どのような価値観を設定するかは極めて重要な問題なので、時間をかけて判断していくのがよいですが、以下の質問だけでも傾向をつかむことはできます。
あなたが職務で決定を下す際、どのような基準を重視しますか?
a) その判断が自身や組織の成長に結びつくどうか
b) 組織あるいは個人として求められている適切な行動であるかどうか
c) もっとも多くの利益や幸福をもたらすかどうか
職場での人間関係において、もっとも大切だと思うことは何ですか?
a) 思いやりや誠実さや技術など、望ましい個人の特性が尊重されること
b) ルールや規範を守り、誠実で調和のある行動をとること
c) 人々の幸福や利便性が最大化されるように配慮すること
問題解決をする際、次のどのアプローチをもっとも重視しますか?
a) 自分自身や仲間の成長を促すアプローチ
b) 社会や組織の規則や原則にかなったアプローチ
c) 最も多くの利益を生み、不利益を解消するアプローチ
人事評価において、どのような基準がもっともふさわしいと思いますか?
a) 社会人あるいは業界の人間としての成熟度を基準に評価する
b) 規定された職務をどれだけよく遂行できるかを基準に評価する
c) 社内外に対してもたらした利益や効果を基準に評価する
経営者自身はもちろん、組織内のできるだけ多くの人に、上記の4つの問いに答えていただければと思います。
実際の経営支援の場面では、少なくとも経営者と経営幹部の全員にはこの質問に答えてもらっています。
どのように評価をするかは、前回の記事をお読みのかたはおわかりかもしれませんが、a、b、cのいずれが多いかで判定します。
aは能力主義=徳倫理学、bは役割主義=義務論、cは成果主義=功利主義に近い考え方です。
もし回答の6割以上が同じ主義に集中するなら、その主義を土台として考えはじめてよいと思います。
そうでなければ、一人ひとりの価値観が根本的に異なっているかもしれません。
一人ひとりの価値観が異なる場合は、どのような価値観を選ぶかを議論して、いずれかを意識的に選びとるというプロセスが必要になります。
すべての人の価値観に沿うものにはならないでしょうが、それでも、一度議論を行って、合意をえるということが大事です。
それはさながら、民主主義国家で法律を定めるようなものです。
このプロセスについては、またあらためて書きたいと思います。