背景と課題
今回は「生成AIを人材育成に活用する手法」、とくにその中でも「ノウハウの蓄積と共有の手法」を紹介します。
当社は農業をはじめ、ものづくりの会社のご支援をすることがよくありますが、そうした産業で課題になるのが人材育成です。
いまでは生成AIによる判断の質が高まり、人間が判断をしなくてもよい場面が増えてきました。
しかしものづくりになると、実際に手を動かすのは人間である場合がほとんどです。
自動車部品のような大規模なラインによる機械生産であれば話は別でしょうが、中小のほとんどの事業者は一つひとつの作業について人間が判断しなければならないことが多いです。
そのため、新人が一通りのことを学ぶのにも多くの時間がかかります。
その会社ならではのものづくりの作法はもちろん、物理や化学や生物やコンピューターサイエンスといった基礎的な知識など、学ばなければならないことは膨大です。
人材育成のためにベテランが手取り足取り教えることができればよいのでしょうが、そんなことをしている余裕は普通はありません。
しかし十分な教育や説明ができないと、新人が自信をもって自分で判断することはできないでしょうし、知識や技術を蓄積していくこともかないません。
生成AIを活用したナレッジ共有
このジレンマを解消するために生成AIが活用できます。
ノウハウを何かしらのデータベースとしてまとめておいて、それをChatGPTなどの生成AIが参照するようにしておけば、新人が生成AIに質問を投げかけ、その質問に対して社内のナレッジをもとに生成AIが回答することが可能になります。
後述するようにアプリを作成すると便利ですが、簡易的には、ワードファイルやエクセルファイルノウハウをまとめておいて、それをChatGPTならプロジェクトやカスタムGPTに、GeminiにならGemに覚えさせることで実現可能です。
生成AIを使うメリットのひとつは、ベテランが新人に直接教えなくてよくなることです。
もちろん直接教えなければならないこともあるはずですが、分からなくて仕事が滞るノウハウの大半は些細なもので、たとえば「このデータはどこにあるのか」とか「機械の設定はどのような初期値にするのか」といった、人から人へ直接伝えなければならないことばかりではありません。
こうした物や情報の置き場や機械の設定のしかたといった情報は、人から人に直接に教えなくてもいいものの、社内に無数にあるため、新人がいっぺんに全部覚えることはほとんど不可能ですが、ふつうのやり方で情報をすぐに見つけることも困難です。
そのため、教えるのに手間がかかってしまいます。
そこで、生成AIによる情報の検索・アウトプットが力を発揮します。
本来は、こうした細かいことよりは、品質の見極めとか、細かい指先の実際の感覚といった、ものづくりの業務にまつわる本質的な要素を優先的に伝えたいでしょう。
そのためにも、細かい情報はできるだけデータとして蓄積しておくことが大事です。
データベース構築のポイント
最初にデータを蓄積するのは大変かもしれませんが、どんな情報も、従業員教育をしようと思ったら、いずれにせよ必ず一度は伝えることになるはずです。
実際のところは一度ではなく、従業員の人数ぶんはくり返すでしょうし、実際は1人に対して2回も3回も使えることでしょう。
それを考えると、伝えるときについでにデータベースにしておくのが効率的です。
単にデータベースをつくっただけだったら、分厚いマニュアルを誰も最初から最後まで読まないのと同じように、使えるものになりません。
しかし、生成AIがそうした膨大な情報を瞬時に読み解き、必要な情報だけを伝えてくれるので、言語情報のデータベースの意義がいま極めて大きくなっています。
さらに、蓄積したデータから必要な情報を収集するばかりでなく、データベースをつくるときにも生成AIが活用できます。
その手法をいくつか紹介します。
録音・音声入力
作業の細かい内容をパソコン画面に入力することを考えてみてください。
大事なこととはいえ、なかなか気がすすまない面倒なことだと思います。
しかし、「実際にその作業をしながら要所要所で音声を録音する」というやり方だったらいかがでしょうか。
大した手間ではないはずです。
生成AIは、そうした録音データを与えられたら、ポイントをまとめたマニュアルをつくってくれます。
最初にマニュアルのフォーマットをつくって、それを生成AIに与えておけば、そのフォーマットに沿ったアウトプットにもしてくれます。
この手法ではChatGPTの音声入力機能が便利です。
録音した音声ファイルの文字起こし・解析はGoogle AI Studioがお勧めです。
テキストの校正
テキストで入力する場合でも、雑に箇条書きやキーワードだけ書くだけで、生成AIがきれいな文章に仕立て上げてくれます。
たとえ漢字の変換間違いや誤字脱字があっても、前後の内容をもとに生成AIが修正してくれます。
この方法を使えば、テキストデータとしてノウハウを入力するとしても、そんなに手間はかからないでしょう。
生成AIによるドラフト作成
「まず生成AIに作業マニュアルをつくるように依頼する」という手もあります。
生成AIが作成したマニュアルをもとに、自社ならではの情報や材料や機械といった情報を付け加えれば、それでノウハウのデータ化は完了です。
このやり方は、効率がよいだけでなく、当たり前すぎて意識していなかった詳細を含めたマニュアルができるので、おすすめです。
これらの手法を組み合わせて使えば、さらに効率が上がります。
こうしてデータを蓄積していけば、人力で全部つくるよりも数倍も数十倍も早くノウハウを蓄積できるでしょう。
ぜひ試してみてください。
多言語対応で国際人材をサポート
生成AIには、多言語に対応しているという強みもあります。
当社のクライアントには外国人技能実習生などの外国人人材を雇用しているところもありますが、そうした人材との間にはどうしても言葉の壁があります。
しかし生成AIであれば、外国人が自身の母国語で質問をし、自身の母国語で回答を手に入れることができます。
外国人を雇用しているかたには、生成AIでのデータベース活用はとりわけおすすめです。
アプリの活用
ちなみに、当社は中小規模の事業者向けに、生成AIを活用したノウハウ蓄積とQ&Aのためのアプリを作成しています。
クライアントからのニーズをもとに開発したもので、実際に使用してもらっています。
このアプリでは、ベテラン社員が作業のコツをテキストで入力したら、それを生成AIがきれいな文章に仕立て上げてくれます。
また、写真や画像をアップロードすることもできます。
新人がチャットで作業のコツなどを質問すると、ベテランが入力したノウハウや画像のデータベースの中から関連する情報を抽出し、的確に回答してくれます。
以下のスクリーンショットはこのアプリのサンプル画面で、学習させた当社の業務マニュアルをもとにユーザーの質問に回答しているものです。

このような感じで、自社ならではのやりかたを具体的に教えてくれます。
関心があればお問い合わせください。