農業の変動費の相場は? 売上高に占める割合を解説

前回、農業の変動費を面積・生産量・売上高のそれぞれに比例するものに分けて分析・シミュレーションするのがよいということを書きました。
それでは、各変動費はどのくらいの水準になるのでしょうか。

ここでは、日本政策金融公庫が出している「農業経営動向分析結果」を参考にしつつ、主要な変動費について、私が見てきた限りでの農業法人の目安を紹介していきます。
なお、この資料では多数の営農類型に分けて分析がされていますが、「法人」の「露地野菜」から数字を引用しています。

まず、「農業経営動向分析結果」における法人露地野菜のサンプル数は81社で、平均売上高は138,574千円となっています。
この売上高をもとに、主な変動費の水準を計算してみます。

まず材料費は27,668千円なので、売上高に占める割合は20%です。
材料費には種苗費、肥料費、農薬費、諸材料費がありますが、残念ながら資料にはその内訳は記載されていません。
ただし、これら材料費は品目や栽培方法、苗を購入しているかどうかなどによって、大きく変動します。
極端な例では、自然栽培をしている場合は肥料費や農薬費はほぼ0ですし、自身で採種していれば種苗費は0です。
このような変動はあるものの、私が見てきた中では、営業利益を出している法人の売上高材料費率は15%くらいだという印象です。
一概には言えませんが、平均同様の20%以上という水準だったら、まだ削減の余地がある(あるいは売上を高める余地がある)と考えるべきです。

労務費は27,850千円と、材料費とほぼ同じで売上高の20%ほどの大きさです。
これは現場の感覚からするとかなり小さいという印象です。
利益が出ている法人でも、売上高労務費率が30%くらいになっているところは多々あります。
販管費のほうの人件費が16,363千円で、大きな数字になっているので、もしかするとサンプルの中には通常の農業生産法人とは少し損益構造が違う、仕入販売を大きく実施しているような法人が多いのではないかと思います。
そこで、生産に重きを置く法人であれば、売上高労務費率は30%未満、すべての人件費を加味した売上高人件費率は40%未満を目安にされるとよいかと考えています。

燃料動力費は1,208千円で売上高の1%くらいです。
ただし施設野菜では「農業経営動向分析結果」によれば燃料動力費率は3%強となっています。
暖房のために燃料を大量に消費するような品目では、燃料動力費率が10%ほどになることもあります。
こうした相場と比較して、大きすぎるようでしたら削減を検討してください。

面積に比例する変動費としては、農地の賃借料も大きいです。
安いところでは反(10a)あたり1万円とか、場合によっては無料で借りているという話も聞きますが、都市部に近いと3-4万円することもあります。
ものによりますが、一般的な露地野菜の反あたりの売上は50万円くらいなので、賃借料が高いと売上高に対する割合は10%近くになる可能性があります。
賃借料が高い土地では、面積あたりの売上が大きい品目や売り方を選択するべきです。

最後に、販売手数料のことを忘れてはいけません。
「農業経営動向分析結果」では4,158千円と、売上高に占める割合は3%です。
しかし、これは比較的大規模な農業法人が市場や農協を通さずに販売しているからこその数値で、市場や農協への販売ではもっと金額が大きくなります。
市場での野菜の販売手数料は8.5%のことが多いです。
農協の場合は運賃や出荷資材費を含むかどうかによって変わりますが、含む場合は10-17%くらいになるようです。

他にも変動費にはいくつかありますが、金額が大きくなるのは上記のようなものです。
売上高変動費率の相場がどのくらいかは、統計を見たことはありませんが、上記を足し合わせた50-60%くらいが平均になるという印象です。
同じことですが、限界利益率(限界利益とは売上高から変動費を引いたもの)は40-50%ということになります。
ただし、限界利益率は少量・高単価の商品であれば50%を超えることもありますし、低単価で大量に供給する戦略なら30%台でもおかしくはありません。

ご自身の経営の分析や改善を進めるうえで、上記のような相場の感覚をもっていると便利です。

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