標準原価を設定するうえでは、変動費と固定費に分けて考えることをお勧めしています。
損益計算書の項目に沿って考えても問題はないのですが、シミュレーションをする場合にややこしくなってしまいます。
変動費と固定費に分けておくことで、損益分岐点などの値を見ながら標準原価を設定することができるようになります。
参考に、グーグルスプレッドシートのフォーマットを用意してみました。
以下のURLからアクセスできます。
編集はできないようにしているので、ダウンロードしてお使いください。
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1jvghsTdacjBmVcFOHlE0MN2UkV66KOQ2PTvmp98rrZk/edit?usp=sharing
変動費を考えるうえでは、以下のように、「何に比例するのか」によって変動費を分類しておくと、なおシミュレーションがやりやすくなります。
- 生産規模に比例するもの(材料費、労務費、製造に必要な動力光熱費、…)
- 販売量に比例するもの(包装梱包資材費、送料、保管料、…)
- 販売金額に比例するもの(販売手数料、消費税、…)
生産規模に比例するものと販売量に比例するものはどちらも同じように「商品1つあたり」を基礎に考えられることが多いですが、計算の仕方を変えたほうがよい業界や商品もありえます。
たとえば農業では、種や肥料などの材料や労働力は農地の面積に比例して投入するのに対して、農産物の出来高(=販売量)は天気などの要因によって左右されます。
この場合、生産規模に比例する変動費は、面積に比例させるようなシミュレーションにしておくべきです。
あるいは、電子書籍、音楽、ソフトウェアなどの電子データや著作物は、生産したものをいくらでもコピーできるため、生産規模に比例する変動費を「商品1つあたり」で計算することができません。
こうした場合は、変動費は作品1つをつくるのに必要な人件費や外注費などのオリジナル作品1つあたりで考え、販売量に比例する変動費はサービスの使用量などコピー1つあたりで考えるとよいでしょう。
そうして、生産規模と販売量の関係を求めるための変数も用意しておきます。
農業の例なら「面積あたりの販売量」、音楽の例なら「オリジナル作品1つあたりのコピー販売量」といったものです。
このような変数を入れておくことで、生産効率や販売効率が原価に与える影響をシミュレーションできるようにもなります。
固定費のほうも、ややこしいことがあります。
複数の商品や部門がある場合に、固定費をどのように案分するかという問題です。
適切な案分のしかたは目的や状況により異なりますが、人件費ないしは費やしている労働時間によって案分するのがよいかと思います。
売上比例での案分は簡単ですが、高単価の優良な商品に多くの固定費を案分してしまって商品ごとの利益の差を小さくしたり、売上が立っていない新規事業について楽観的な数字を示したりする可能性があるので、あまりお勧めしません。
このように文字だけで説明してもなかなか分かりにくいので、上記のサンプルフォーマットなどで実際に数字をいじりながら、自社の条件に合うやり方を模索していただければと思います。
より突っ込んだ分析をしてみたいという場合は、お問い合わせください。