探していない情報に出会うことが大事
情報を収集するうえでは、「探している情報をいかに見つけるか」ということと同様に、「探していないけれど重要な情報にいかに出会うか」ということが重要です。
いまは情報源が無数にあるので、探している情報を見つけることのハードルはかなり下がりました。
私が大学生のときには国立国会図書館に所蔵されている歴史的な本がどんどんと電子化されていて、おかげで研究の効率が非常に高まったものです。
いま、電子的に検索できる情報の量は、そのころとは比べ物にならないくらいにさらに多くなっています。
専門的な情報源にあたらなくても、グーグルやSNSで検索すればたいていのことは見つけられます。
以前は、「情報を見つけられる」ということが貴重なスキルでした。
図書館の司書のように、どこにどのような情報があるのかを知っている人物が重宝されました。
いま、探している情報を見つけられるというのは、スキルと言っては言いすぎなくらいに、あたりまえのことになりました。
そのため、他の人が探していない、そもそも多くの人があることすら知らないような情報にいかに出会うか、ということの重要性が相対的に高くなってきました。
こうした情報との偶然の出会いを実現する方法はいろいろとありますが、いまの時代、ぜひ生成AIをうまく活用していただきたいです。
私自身がよく実践している方法としては、以下で紹介するように、グーグルアラートとChatGPTを組み合わせるものがあります。
グーグルアラートで情報の入口を確保する
グーグルアラートとは?
グーグルアラートというのは、登録しておいたキーワードに関するWebサイトを自動的に検索し、最新の情報を定期的にメールで届けてくれるサービスです。
以下のURLから利用できます。
https://www.google.co.jp/alerts
「キュレーション」と呼ばれるサービスの一つです。
これに自分自身が関心のあるキーワードを登録しておけば、たとえば毎朝8時といったような指定した日時に、そのキーワードにまつわるニュースなどへのリンクをまとめたメールが届きます。
毎日その最新の情報を眺めながら、関心があるもののリンクをクリックして、具体的な内容を読んでいくわけです。
ただし、登録しているキーワードが多くなるにつれて、すべての記事に目を通すのは大変になります。
また、1つ1つの記事をしっかりと読む時間もなくなっていきます。
この問題を解決するためには、ChatGPTなどの生成AIによる要約を活用するといいです。
私自身は、以下のようなプロンプトを用いています。
情報要約と実践のためのプロンプト例
# 指示
以降のメッセージにて、ユーザーが記事などの一部を入力します。
その文章を要約したうえで、仕事や日常生活において実践できることの案を最大3つ提案してください。
# 条件
- 希少性や意外性が高い情報を中心に、1200文字以内の日本語で要約する
- 要約のあと、もとの文章中で使われている専門用語や業界用語をリストアップし、それぞれ100文字以内の日本語で簡潔に解説する
- 新しくインプットされた文章は、以前に入力された文章とは無関係に、その文章から読み取れる範囲で要約をする
- 入力された文章に、本筋と関係がない広告や別の記事の紹介などだと思われる文章が入っている場合は、それらを無視する
# アウトプットの形式
## 要約
(1200文字以内の日本語での要約の文章)
## 実践例
(実践できることの案を最大3つ)
## 用語
(用語):(用語の解説)
私はText Blazeにプロンプトを登録しているので、新しいチャットを立ち上げてすぐに入力することができます(Text Blazeについての記事はこちら:https://ikkei.biz/text-blaze-with-chatgpt/)。
また、一度上記のプロンプトを入力しておけば、あとは要約したい記事だけをインプットすれば同じように要約してくれるので、スマートフォンアプリからでも利用しやすいです。
情報収集のステップ
具体的には、以下のようなステップを踏んでいます。
- グーグルアラートで届いたメールを読んで、より深く知りたいと思ったリンクをクリック/タップする
- 記事の全体を、パソコンならCtrl + Aで、スマートフォンなら文字を長タップして、全選択してコピーする
- ChatGPTで上記のプロンプトを入れておいたチャットを開き、コピーしていたテキストを貼り付けして送信する
プロンプトを見るとわかるように、広告などの無関係な情報は無視するように指示してあります。
そのため、Webサイトの全体を選択してコピー&ペーストするだけで、簡単に要約が得られます。
記事本文だけを選択したり、ペーストしたあとにテキストを修正したりする必要はほとんどありません。
このプロンプトを使って本ブログの以下の記事を要約してみると、以下のようになりました(o4-mini-highを使用しました)。
https://ikkei.biz/text-blaze-with-chatgpt/
要約
多くの人が生成AIを活用する一方で、「プロンプト入力が面倒」「自分で書いたほうが早い」といった理由でやめてしまうケースがある。カスタムGPTを用途ごとに増やすと管理が煩雑になり、筆者も50個近いGPTから必要なものを探すのに手間取っていた。そこでGoogle Chrome拡張「Text Blaze」を使うと、入力欄に「/」+ショートカットを打つだけであらかじめ登録したテンプレート(スニペット)を呼び出せる。ドロップダウン選択やクリップボード挿入、日時自動入力などの機能もあり、複雑なプロンプトを瞬時に整形できる。これによりカスタムGPTの利用頻度は減り、ひとつのプロンプトで完結したい場合や頻繁に使う場合の効率が格段に向上する。基本機能は無料で使えるため、まずは試してみる価値がある。
実践例
- 頻出プロンプトのスニペット化・共有
社内でよく使う定型質問やレポートフォーマットをText Blazeに登録し、チームでライブラリを共有する。- ドロップダウン項目で切り替え可能なテンプレ設定
レポートの文体・出力形式・言語などをドロップダウンに登録し、ワンクリックで最適なプロンプトを構築する。- クリップボード連携で資料転記を自動化
コピーした表や文章をスニペット内の{clipboard}
に挿入し、ChatGPTでのデータ要約や翻訳を即時実行できるフローを整備する。用語
- Text Blaze:Chrome拡張。ショートカットで定型文を呼び出すツール。
- Chrome拡張機能:Google Chromeに機能を追加するプログラム。
- スニペット:よく使うテキストを登録し、ショートカットで展開する短文テンプレート。
- ドロップダウン:候補リストから選択肢を絞り込めるUI要素。
- クリップボード:コピーしたテキストや画像を一時保存する仕組み。
- カスタムGPT:用途別に自作するChatGPTのカスタムモデル。
- プロンプト:AIに与える指示文や質問文のこと。
- MyGPTs:ChatGPT上で作成・管理するカスタムGPTの総称。
グーグルアラートに限らず、いろいろなキュレーションサービスやメールマガジンで情報を受け取っているものの、読む時間がない……という課題を抱えているかたは多いと思います。
生成AIによる要約をうまく使いこなせば、触れられる情報の量が格段に増えます。
ひと手間かけて、自分が使いやすいプロンプトをつくってみてください。
そこから、情報収集の質が変わるかもしれません。