私は過去に種苗メーカーの海外営業エリアセールスマネージャーとして、また経営コンサルタントとして多くの農業参入事例を目にしてきました。
その中には黒字を出せているところが半分くらいで、残り半分は赤字を出しているという印象です。
成功しているところは、本業の強みをうまく生かして、一般的な農業経営者が持ち合わせない知識やスキルをフル活用し、新規の事業として農業を成功させています。
この強みは、オリジナリティが高いものでなくても構いません。
たとえば大企業の組織運営やDX、販路開拓といった当たり前のことでも、十分に実施できている農業経営体は少ないものです。
一方で、失敗しているところは大企業ならではのロジックで参入し、進まなくなるというパターンが多いように思います。
そのうまくいかない理由の最大のものは、人件費のかけすぎです。
売上高に占める人件費の割合(売上高人件比率)が一つの目安として有効で、きちんと利益を出している農業法人はこれがおおよそ30%台のことが多いですが、赤字の農業法人は下手をすると50%を超えているところもあります。
また、施設園芸などの投資を行う農業の場合は、減価償却費が大きすぎて利益が出ないばかりか、投資回収もままならないという状況をときどき目にします。
一度ご自身の経営体の売上高人件比率や売上高減価償却比率を計算してみてください。
対策はケースバイケースですが、まずは現状を把握した上で売上高人件比率が適切な水準になるように、言い方を変えれば一人当たりの売上高が適正な水準になるように、販路の開拓や業務の効率化をどのように進めるべきかが見えてくるものです。