一つの軸で従業員を評価することには必然的に多数の従業員に不満足を感じさせるリスクがあり、多様な軸で評価しようとしても給与水準に差がある限りは実質的に一つの軸で評価していることになる、ということを書きました。
これを根本的に回避するための方法は、給与水準を全員同じにすることです。
そうした取り組みを行っている企業は多少あるようですが、有名な事例はアメリカのクレジットカードなどの決済処理を行う企業、Gravity Paymentsです。
給与水準が同じというわけではないのですが、Gravity Paymentsは2015年に給与の最低水準を7万ドルにすることを決めて実行し、それを実現するために社長のDan Priceは自身の給与を100万ドル削減したそうです。
その結果何が起こったか。
従業員の離職率が下がったことは当然ですが、業績も向上しています。
2015年当時に120人ほどだった従業員数は、2023年には284人まで増えています。
給与の中央値はおよそ10万ドル。
とくに印象的なエピソードは、コロナ禍で苦境に立たされたときのことです。
同社は中小企業が円滑に決済処理ができるようなサポートをしていますが、コロナ禍によって経済活動が停滞し、中小企業が苦境に立たされると同時に、Gravity Paymentsも資金繰りが苦しくなりました。
40人を解雇すれば問題は解消できましたが、中小企業を助けることをミッションとする同社には、自らの従業員を解雇するという選択肢はありませんでした。
しかし、従業員たちが自ら給与を一時的に下げるという提案を行い、難を逃れました。
コロナ禍当時の従業員数は200人ほどだったようですので、コロナ後も同社は順調に成長していることになります。
これが必ずうまくいく方法だとは言いません。
しかし、組織の力を高めるうえで、重要な示唆を与えてくれると思います。
詳細は、以下など、同社のウェブサイトをご覧ください。