論理的に話すために「分類力」が必要な理由

アウトライナーをあらゆる情報を記録するためのツールとして使用するうえで、ひとつ大事なことがあります。
適切な分類をする能力をもたなければならない、ということです。

ビジネスでも学問でも、ものごとを適切に「分類」するのは重要な能力です。
その理由はいろいろとありますが、ここでは、「分類」が「論理」の前提になるということを述べてみましょう。

あなたは、分かりやすい説明が得意でしょうか。
自己評価は難しいかもしれないので、身近な人を何人か思い浮かべてみてください。
分かりやすい説明をする人と、そうでない人がいるはずです。

分かりやすい説明をしている人は、ものごとを適切に分類できている可能性が高いです。
少し言い換えると、言い表そうとしているものごとと、使っている言葉が、正確に対応しています。
ここで私が言いたいのは、言い間違いをしていないかとか、知識を十分持っているかといったことではありません。
言葉を適切に使用しているかを自問する習慣があるかどうか、意識すれば適切な言葉の選択ができるか、といったことがポイントです。

聞きなれない言葉かもしれませんが、哲学の用語に「外延」と「内包」という言葉があります。
「昆虫」という言葉を例にすると、「外延」というのは蝶とかバッタとかカメムシのような、その言葉に含まれるものごとのことです。
これに対して「内包」は、「体が頭部・胸部・腹部の3つからなる」とか「脚が6本ある」とか「体外骨格がある」といった、その言葉が示すものごとがもっている特徴のことです。

クモのことを話しているときに「昆虫は嫌い」という発言があれば、その発言は話の論理に沿っていません。
クモは昆虫ではないからで、それは、クモに8本の脚があることから明らかです。
だから、「昆虫は嫌い」という発言に対しては、「この人はクモが昆虫でないことを知らないのかな」とか「昆虫の定義を知らないのかな」といったように、間違いを容易に理解できます。

問題は、もっと外延や内包が分かりにくい言葉や、相手が知らない言葉を使う場合です。
こうした言葉を使う場合には、その言葉がどのようなものを指しているのか(外延)、そうして指されているものはどのような特徴をもつのか(内包)を併せて説明する必要があります。

正しい分類ができないと、こうした言葉の説明が正しくできません。
言葉の説明が正しくできないと、当然ですが聞き手はその言葉の意味や使い方が理解できず、話の中身が分からない、ということになります。

たとえば、私が運転免許をとろうと教習所に通っていたときのこと。
実技の練習で交差点を右折するときに、教官が、交差点の中心の表示(少し調べてみましたが正式には「右左折の方法」という表示のようです)を指差しながら、「あの内側を通って」と説明しました。
この説明を聞いて、どのように動くのが正解だと思いますか?
もちろん、運転免許をもっている人でしたら、(右折の場合は)「表示を踏まないように表示の右側を進む」ということはわかるでしょう。
運転免許取得前の私も、常識として、そのように動くのだろうと思っていました。
が、「内側を通る」という説明を聞いて混乱しました。
交差点の中心の表示に対して、右/左とか手前/奥といったことならすんなりと理解できますが、ひし形の表示の「内側」とはどこでしょうか?

「内側」という言葉は「外側」に対する言葉なので、一定の領域が必要。
交差点の中心の表示はひし形のようになっていて、小さいけれども多少の領域はある。
それなら、表示の内側というのは、道路の上のその表示が描かれている部分のことのはず。

…と考えましたが、その一方で「そんなはずないだろう」と思い、その表示を踏まないように右側を通って行きしました。

たぶん、その教官は「内側」という言葉を普通とは多少なりとも違う仕方で理解していたのでしょう。
そのために話が通じない。

「内側」という言葉でもこのような理解の齟齬が起きるのであれば、もっと複雑な言葉に対してはより注意深くなければなりません。
「営業利益」とか「民主主義的な国」といった言葉はもちろん、「正しい」とか「幸せ」といった日常的な言葉についても、実は正しい分類は困難です(そもそもこうした言葉に「正しい分類」と呼べるものがあるかどうかも難しい問題ですが)。

ものごとを分類する場面は、日常の中に無数にあります。
ここまで議論してきたように、言葉を使うたびに何かしらの分類をしているからです。

分類は論理の前提。
情報を整理するためにも、分かりやすい説明をするためにも、人によって理解が大きく異なる可能性がある言葉については、その言葉の外延(具体的になにを指しているか?)と内包(どのような特徴をもっているのか?)を確認してみるとよいでしょう。

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