お金のことは税理士任せで、予算もつくっていない。
所得・利益がいくらになるかは確定申告や決算が終わってはじめてわかる。
こうした農業経営者のかたはとても多いと思います。
お金のことを学びたいけれど、どこから手をつけたらいいかわからなくて億劫だ。
誰かに教えてもらいたいけれど、教えられる人がいない。
お金がかかるセミナーを受けて、ちゃんと実力がつくか分からない。
そんな不安や思いをもつかたに向けて、財務管理を学ぶとっかかりとなる参考書を3つ紹介します。
『農業簿記検定教科書 3級』
農業の財務・会計を学ぼうと思ったら、農業簿記が中心となる分野です。
農業簿記検定の勉強をすることは、農業に関する会計の知識を学ぶための効率のよい手段で、一度は教科書に目を通してみることをお勧めします。
3級から1級まであります。
「決算書を理解して財務状況のよしあしをある程度判断できるようになりたい」といった目的でしたら、3級で十分です。
一歩進んで、「改善方針を考えられるようになりたい」ようでしたら、原価管理まで範囲となっている2級の勉強をお勧めします。
どの級についても問題集も出版されているので、少し学んだことがあるようでしたら、まず問題集を解いて自身の得意分野・苦手分野を把握し、ピンポイントで学習を進めるとよいでしょう。
『新 農家の税金』
毎年版を重ねている、農業経営者のための財務の情報源です。
農業の財務・会計についての解説だけでなく、税や補助金といった情報もふんだんに掲載されている実践的な本ですので、教科書的なものよりは実践で学びたいというタイプのかたの場合は、こちらをお勧めします。
内容に理解できないところがあったとしても、農業経営をするうえで有益な情報があるため、とりあえず一度は目を通しておくとよいです。
滝澤ななみ『みんなが欲しかった! 簿記の教科書 日商3級 商業簿記』
農業簿記の参考書では内容がなかなか理解できないという場合は、日商簿記の参考書から入ったほうがよいかもしれません。
というのも、農業簿記よりは日商の簿記検定のほうが学習者がはるかに多いため、その分参考書の種類が多く、各出版社がより分かりやすい本の出版をするために競争しているからです。
本書はTACという大手の資格学校が出版しているもので、分かりやすさに定評があるものです。
シンプルな事例を用いて、簿記や会計の基本的な考え方を分かりやすく紹介してくれています。
また、特典としてWebで取り組める問題集や、解説動画があることも、初学者にとって大変便利だと思います。
経営判断をするうえでは、原価管理や資金繰り管理といったことに取り組む「管理会計」が大事ですが、その入り口に立つためにも、まずは上記の参考書で基本をざっと学ぶことをお勧めします。
資格や検定をとるためには学習に時間をかけなければなりませんが、経営判断をするためにはどちらかというと大局的な理解が大事なので、ざっくりとした理解でも構いません。
一度でいいので上記のいずれかを読んで、それから次のステップに進みましょう。