【簡易シミュレータつき】農業経営の財務目標を考えるための簡単な方法

目標設定は経営の運命の分かれ道

経営をするうえでの財務目標(売上等の数値目標)を設定する方法はいろいろあります。
そのぶん、「どうやって目標を設定すればいいのだろう?」と、方針を立てられずに迷うかもしれません。

ここでは、農業経営をするうえでの簡易的な数値目標設定の方法を紹介します。
たいへんシンプルなものですが、これをするだけで赤字や十分な所得が得られないといった問題の根本的な原因を解決できることが多々あります。

目標設定はいくつかのやりかたを試してもらいたいですが、必ず実施してほしいのが、
「目標とする所得から逆算して経営規模を考える」
という方法です。
とくに、これから農業をしようとするかたは、この計算は必須です。
これをしていないと、「生産はうまくいったのに所得が残らなかった……」といった問題が起こりえるからです。

簡単なものですが、以下の5つの項目に数字を入力して、「計算」ボタンを押してみてください。
目標としている所得を確保するための目安となる売上と面積が計算されます。

簡易シミュレータ

農家経営規模計算ツール
【入力】

※ このボタンを押しても画面上で計算がされるだけで、入力した内容や計算結果はどこにも送信されません。

【結果】
自身の労働時間割合 –%
事業全体の人件費 — 円
目標売上高 — 円
目標面積 — 反

目標所得金額

ご自身が生活をするうえで必要な所得金額を入力してください。
いくらくらいあればいいのか分からないという場合は、一度時間をしっかり確保して計算してみるといいです。
食費・家賃・水道光熱費など、必要な項目を一つずつ考えていくことが大事です。
そのうえで、不慮の出費に備えるために、少し余裕をもたせた金額を目標として設定してみてください。

売上高人件費率

売上に対して人件費がどのくらいの割合を占めるのか、という値です。
計算式は
人件費÷売上高×100[%]
となります。
もし人件費が400万円で売上が1000万円なら、
400万円÷1000万円×100=40[%]
と計算します。

人件費には、従業員の給与だけでなく、経営者の収入(個人事業の場合は生活費等、法人の場合は役員報酬)や、社会保険料などの法定福利費も含みます

よくわからなければ40%としてみてください。
一般的には30%から45%の間になることが多いですが、赤字の企業だと50%を超えてしまっている場合もあります。

フルタイム換算合計労働力・自身のフルタイム換算労働力

必要な労働力を計算してみてください。
何をもってフルタイムの労働時間とするかは人によって異なるでしょうが、最初はあまり厳密に考える必要はありません。
仮に自身が農業を週に4日やるなら、平日5日のうちの4日なので、フルタイム換算で0.8人、といった感じでよいです。

仮に週40時間で月に4週働くと、月間160時間、年間1920時間となります。
仮に繁忙期のみアルバイト2名を雇用して、合計500時間働いてもらうなら、
500÷1920≒0.26
となり、フルタイム換算で0.26人です。

この場合、先ほど計算した自身の0.8人と合わせて、1.06人が合計労働力となります。

面積あたり売上

どのくらいの規模の経営をすればいいのかを求めるためには、規模あたりの売上が大事な指標になります。
農業の場合、規模はふつう面積とほぼ同義です。
これまでの実績から、反あたりどのくらいの売上が立つのか、計算してみてください。

これから農業をするから実績がないという場合は、目安で構いません。
ネット上で「農業 経営指標」などのキーワードで検索をすると、いろいろな生産品目について、面積あたりの売上の指標が見つかります。

大まかには、
水稲:10万円/反
露地野菜:30万-100万円/反
施設野菜:100万-1000万円/反
果樹:50万-300万円/反
といった数字が相場かと思います。

計算結果

上記の情報をもとに、目標となる売上高や面積を簡易的に計算をします。

事業全体の人件費

まずは、経営全体でどのくらいの人件費が望ましいのかを計算します。
シンプルな例で計算してみます。

仮に合計労働力が2人で、自身はフルタイム(1人分)で働き、生活費等の所得が400万円だとします。
1人分の所得が400万円なので、2人分の人件費はその2倍、800万円となります。

ここでは、経営者と従業員の時間単価が同じだと仮定しています。
経営者と従業員だと時間単価が違うでしょうが、経営者の場合は最低賃金がないので、稼げない場合は最低賃金未満になってしまう可能性もあります。
そのため、まずは経営者も従業員も時間単価が同じだと考えて、大きめの目標にしておくことをお勧めします。

目標売上高

人件費の金額が出たら、これと売上高人件費率を組み合わせて、売上高の目標を計算します。
計算式としては、
売上高人件費率=人件費÷売上高
という式を変形して、
売上高=人件費÷売上高人件費率
と計算します。

仮に人件費が800万円で、売上高人件費率が40%なら、目標売上高は
8,000,000÷0.4=20,000,000[円]
となります。

目標面積

目標とする売上高が決まったら、これと面積あたり売上高を組み合わせて、面積の目標を計算します。

面積あたり売上=売上高÷面積
ですので、これを変形して、
面積=売上高÷面積あたり売上
と計算します。

仮に目標とする売上高が2000万円で、面積あたり売上が100万円/反なら、目標面積は
20,000,000÷1,000,000=20[反]
となります。

使いかた

上記の計算はとても大雑把なもので、これで目標を設定するわけにはいかないだろうと思われるかもしれません。
もしもっと精緻に計算して目標を設定しているようでしたら、あえてこのような大雑把な方法をとることはありません。

しかし、これまで多くの農家・農業法人の経営分析をしてきましたが、天災などを除いて、赤字の理由のほとんどは「そもそも人件費を賄えるだけの売上・面積の規模がない」というものでした。
ですから、こうした計算をしたことがない場合は、ぜひ、上記のフォームにて計算してみてください。

もしかしたら、必要な経営規模をもたないことに気づくかもしれません。

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