スキルを身につける上で、専門用語を覚えることは大変重要です。
ここでは、英語のような外国語を学ぶときのことを例に取り上げてみます。
思考訓練として新しい記号体系に触れる
かなり古い参考書ではありますが、『思考訓練の場としての英文解釈』という大学受験用の参考書がありました。
この本に出されている問題は非常にレベルが高いということで、最難関大学を目指す人向けの参考書として一定の人気を博していたものです。
この本の主張として掲げられていたのが、(読んだのはずいぶん昔のことなので正確ではないかもしれませんが)「英語を読むということは、日本語とは異なる構造をもつ言語を解釈するということであり、それは思考訓練である」といったものです。
単に英語が使えるようになるということではなく、英語を日本語とは異なる記号の体系として解釈する力をつけるべき、という趣旨であると私は理解しました。
これは論理学を学ぶことにも当てはまりますし、数学を学ぶことにも当てはまると思います。
論理学や数学といった記号の体系を理解することは、新たな思考の枠組みを獲得することです。
あるいは、楽譜を読むといった音楽の習得についても同じことが言えるでしょう。
異質なものに出くわしたときに、その背景に横たわる論理構造を理解することは、日常生活においてもビジネスにおいても有益な根本的なスキルであると思います。
文法用語を理解すると時間を大幅に節約できる
英語の学習に話を戻します。
主語とか述語とか形容詞とか関係代名詞といった文法用語を理解しているでしょうか。
別にこうした文法用語を理解していなくても英語は話せます。
英語圏で生まれ育ったネイティブスピーカーは、これらの文法用語を意識することなく話しているはずです。
日本における英語教育においても、「習うより慣れろ」式で、英語圏の子どもが英語を習得するように、ひたすら英語の環境に身を置くことで習得しようとする方式もあります。
これが悪いことだとは言いませんが、これでは思考訓練にはなりませんし、それ以上に学習効率が悪いと思います。
中学生に英語を教えていたとき、goodとwellをどう使い分ければよいのかわからないという生徒が一定数いました。
He sings good. という表現と、He sings well. という表現のどちらが正しいでしょうか。
正しいのはHe sings well.のほうです。
これを理解するために、ひたすらたくさんの文章を読んだり会話をしたりして、「こういう場合にはgoodを使う、こういう場合にはwellを使う」という場合分けを経験から習得するのは非効率です。
それよりは、「形容詞」という概念と「副詞」という概念を理解して、goodは形容詞であり、wellは副詞であるということを覚えておく方がよいです。
そうすれば、あらゆる場合においてこの2つの単語の使い分けができます。
英語を得意にするために理解するべき文法用語
英語を習得したいと思ったら、少なくとも以下のような文法用語は理解しておくべきだと思います。
- 品詞(名詞、代名詞、動詞、形容詞、副詞、…)
- 文法関係(主語、述語、目的語、補語)
- 時制(現在、過去)
- 相(進行、完了)
- 法(仮定)
- 句・節
行き詰ったら「専門用語を理解しているか」を確認する
このように専門用語を覚えたほうがよいのは、英語学習に限りません。
もしスキルアップにおいて壁にぶち当たっていると感じたら、それはもしかしたらその分野の基本的な思考方法を理解できていないのかもしれません。
それを理解するためには、専門用語を一つ一つ正確に理解していくことが大事です。
一見面倒で遠回りのように思えるかもしれませんが、一つの概念を理解すれば、その概念が関連することについての理解も一気に促進されます。
逆に、ある概念を理解しなければ、先に進めないということはよくあるはずです。
私には、「形容詞」や「副詞」といった概念を理解せずに英語(やその他の外国語)が話せるようになるとは思えませんし、極端に言えば日本語も正確に読み書きできないのではないかと思います。
ここまで「概念」という単語をしばしば使ってきました。
「概念」という言葉を正しく使っているという自信はありますか?
「概念」と「観念」はどう違いますか?
こうしたところから学びはじめてみるとよいかもしれません。
専門用語を覚えることの大切さを多少なりとも感じていただければ幸いです。