生成AIで農業経営を効率化! 時代の進歩に置いていかれないための実践事例

生成AIってどうやって使うの? まずはここで紹介している方法をお試しください

「生成AIについての話題はよく聞くけれど、農業経営にどう役立てればいいのかわからない」——こうした声をよく聞きます。
私はセミナーなどでよく実際に生成AIの操作をしながら、具体的に活用の方法をお見せすることがありますが、そうすると具体的な改善方法が見えて、「使ってみよう」という感想をいただきます。
生成AIは、特別なIT知識がなくても使い始められるツールであり、農業経営の様々な場面で実践的に活用できます。

本記事では、農業経営における生成AIの具体的な活用方法を、実務に落ちる形で解説します。

目次

農業経営での生成AIの活用場面

事業計画の下書き作成

生成AIは「生成」という文字の通り、アイディアを出すのが得意です。
人間のひらめきや納得が一番大事だとしても、膨大な要素と要素の組み合わせを一瞬で試せるという点では、組み合わせによる発想力ではAIは人間よりもはるかに上です。
この力を活かさない手はありません。

一般的な顧客ターゲティングから商品設計、実行計画作成まで、一連の事業計画作成のプロセスを生成AIとの共同作業で行えば、効率よく、しかも自分だけでは考えつかないアイディアを生むことができます。

また、損益計画・収支計画などをエクセルファイルとして出力させることも可能です。
もちろん数字の確認・修正は必須ですが、自分自身で一からフォーマットをつくるよりもはるかに効率的に計画を作成できるはずです。

詳しくは以下の記事をお読みください。

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メール文作成

文章作成は、生成AIが最も得意な領域です。
私自身は、どうしても自分の文体で文章を書きたいので、生成AIの文章をそのまま使用するということはないのですが、それでも、生成AIがドラフトを書いてくれるため、メール作成にかかる時間は半分くらいになっているように思います。
とくに、返信のときには、相手からのメールを踏まえたうえでドラフトが作成されるので、効率がよいです。

なお、私はメールのチェックも生成AIで効率化しています。
具体的には、ClaudeをGmailと連携させて、以下のようなプロンプトを使っています。

Gmailの未読メールをすべてチェックして、返信が必要かどうかを判断したうえで、概要とともにリストアップしてください。
また、返信が必要である可能性があるメールについては、肯定的な返信と否定的な返信の2バージョンの返信文面案を作成してください。

このようなプロンプトを活用することで、メールボックスを開くと同時に、ほとんど考えることなく対応をはじめることができます。

情報収集・リサーチの効率化

農業に関する制度・補助金・新技術・市場動向などの情報収集は、時間がかかる作業です。
生成AIは、こうした情報の整理・要約・解説に使えます。
私もコンサルタントとして調査をすることはよくありますが、生成AIがネット上の情報を収集できるようになってからというもの、情報を探す作業はAIにほぼ任せてしまうようになりました。
情報を読んで理解する時間は当然必要ですが、情報を探す手間がなくなるので、調査にかかる時間は以前の3割くらいまでは削減されていると思います。

調査のときには、通常のチャットで調査を依頼してもいいですが、ChatGPTやGeminiに搭載されている「Deep Research」という機能を活用することを強くお勧めします。
これは、数十分から数時間くらいかけて、生成AIがさまざまな情報源を調査したうえで、レポートをまとめてくれるという機能です。
新人コンサルタント・新人リサーチャーが作成するものよりも高品質なレポートが、人間が調査しまとめるのにかかる10分の1以下の時間でできあがります。

農業においても、たとえば以下のような情報収集で力を発揮します。

  • 論文などに載っている学術的に信頼できる農法などの技術情報を調べる
  • 海外の最新の実践事例を調べる(生成AIは言語の壁を超えて調査が可能)
  • 農地法などの法律や補助金等の公的支援の詳細を調べる

病虫害の診断

生成AIは画像にも対応しています。
とくに似ている画像を見つけることが得意なので、病虫害の診断にも力を発揮します。
何かしら病害や虫害が発生していたら、その部分を撮影した写真を生成AIにアップロードしたうえで、「この症状の原因を考えてください」といった指示をします。
私はいくつかの病害について試してみましたが、基本的な病気については8割くらいの確率で正しく診断できているという印象です。

なお、このときには念のため「作物」「地域」「時期」といった情報も文章にて与えておくとよいです。
こうした情報があると、画像だけでなくテキストによっても病虫害の情報を収集・評価できるようになるため、診断の精度が高まると思われます。

ChatGPTによる病害診断の例

上記スクリーンショットのような感じです。
なお、この病害は斑点細菌病のものなので正解です。

技術継承

作業効率の改善や技術習得のための一般的な手段として「マニュアル作成」がありますが、生成AIの登場以降、マニュアルのありかたは大きく変わったと感じています。
従来のマニュアルは未経験者・未習熟者にとっては「どこに何が書いてあるのか」「そもそも知りたい内容がマニュアルに書かれているのか」を調べるのに手間がかかったため、せっかくつくっても活用されにくいものでした。

しかし、生成AIによるマニュアルは違います。
まず、作成にかかる手間が格段に少なくなりました。

たとえば、動画からマニュアルを作成することができます。
ベテラン社員が説明する様子を動画に撮っておき、その動画を生成AIに読み込ませて、「この動画をもとにして業務マニュアルを作成してください」と指示をすれば、きれいに整ったマニュアルが作成されます。
なお、このような動画分析にはGoogleのGeminiがお勧めです。

音声データでも構いません。
たとえば、毎日の終業時のミーティングで一日の振り返りや、ベテランからのちょっとしたアドバイスをもらう時間を設けます。
それを録音しておき、動画のときと同じように生成AIに読み込ませて、文書化します。

生成AIでマニュアルをつくるとマニュアルごとに体裁が異なるので、そのまま使おうと思うと、体裁を統一したくなります。
しかし、その時間をかける必要はありません。
とりあえずそのまま全部生成AIに読み込ませて、マニュアルを読みたい人は生成AI経由で読むことにすればよいのです。
たとえばChatGPTのプロジェクトという機能やカスタムGPTという機能、あるいはGeminiのGemという機能では、生成AIにファイルを学習させておくことができます。
そのため、読みたい人が通常の生成AIとのチャットと同じような感じで「○○のやりかたを教えてください」と尋ねれば、生成AIがマニュアルのデータの中からどれを伝えるべきかを判断して、適切な情報を教えてくれます。
このとき、どのファイルのどの部分にその情報があるのかもあわせて教えてくれるようにできるので、念のためオリジナルのマニュアルの内容を確認したいという場合も簡単です。

こうした内容については、以下の記事でもう少し具体的に書いています。
当社オリジナルの生成AIアプリの紹介もしているので、よければお読みください。

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生成AI活用のポイント

生成AIは使えば使うほど、よりよい使いかたができるようになっていくものです。
ぜひ、さまざまな場面で「とりあえず生成AI」といった感じで活用し、可能性を探索してもらえればと思います。

ただし、生成AIを使用するうえではいくつか重要な注意点もあります。
よく言われることですが、以下のようなことは心がけてみてください。

個人情報・機密情報を入力しない

農家の顧客情報・取引先情報・財務データなどをそのまま生成AIに入力することは、情報漏洩のリスクがあります。
可能性としては極めて低いものの、実際のリスクの大きさというよりは、いわゆるガバナンスの問題として、生成AIに秘密情報を与えることは避けたほうがよいです。
特定の個人・企業が特定できる情報は、具体的な名称を伏せた上で入力するようにしてください。

ただし、生成AIの企業向け有料プランでは、ユーザーが入力したデータが生成AIの学習に使われないことが明記されているため、この点では安心です。
逆に、企業として生成AIの契約をしておらず、各人が個人のアカウントで生成AIを利用している場合はリスクが大きいです。
生成AIを活用できる組織になっていくためには、企業としてアカウントを作成するようにしてください。

AIの回答を「答え」として鵜呑みにしない

生成AIは「もっともらしい回答」を生成しますが、内容が誤っている場合があります(「ハルシネーション」と呼ばれます)。
AIは責任を取ることはできません。
AIの回答は「叩き台」「考えるきっかけ」として使い、重要な判断は人間が責任をもつべく裏付けを確認することが重要です。

慣れれば慣れるほど使いこなせる

最初は「うまく使えない」と感じることがあっても、慣れていくことで精度が上がります。
使い続けることが上達の鍵です。


生成AIツール選び

主要な生成AIモデル(LLM)およびそれに付随するサービスの特徴を整理します。

LLM特徴特徴的な機能・サービス
GPT(OpenAI)最も普及している。多機能で汎用性も高い。Deep Research。音声対話。カスタムGPTやプロジェクト機能にて、自社独自のノウハウなどを簡単に学習させられる。
Claude(Anthropic)コーディング(プログラミング)に強みがある。長文の処理・文書作成も得意。CodeおよびCoworkという機能でパソコン内のファイルを直接に操作でき、ワードファイルやエクセルファイルなどを直接生成することが可能。
Gemini(Google)Googleの各種サービスとの連携が便利。GmailやDriveなど、Googleのサービスに組み込まれているため、各サービスからも利用できる。NotebookLMという情報整理・学習支援サービス、Google AI Studioというアプリ開発等のサービス、Firebase Studioというデータベースサービスなど、多様なサービスが存在。

私自身は上記3つすべて有料プランで使用しています(GeminiはGoogle Workspaceにて利用)。
それぞれに特徴がありますが、性能面ではなかなか甲乙つけがたい(トップがすぐに入れ替わる)状態であるため、どれを選んでも失敗することはありません。
機能の多様さと性能で選ぶならGPTが、Googleのサービスをよく使うならGeminiが、多少準備に時間をかけてでも業務の高度化・効率化を進めたいならClaudeがお勧めです。

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この記事を書いた人

福井を拠点にオンライン・対面にて全国の農業経営者を支援している、経営コンサルティング会社「一茎」の代表です。
一茎のウェブサイトおよびメールマガジンでは、経営改善や効率化のためのちょっとしたポイントなどを発信しています。

【経歴】
東京大学文学部卒業、東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻修士課程修了(学術修士)。
外資系種苗メーカーの海外営業エリアセールスマネージャー、経営コンサルティング会社のコンサルタント/マネージャーを経て、一茎を設立。
主要な支援領域はファイナンス(経営分析・財務管理)、デジタル、マーケティング。
中小企業診断士。ITコーディネータ。

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