バランストスコアカード――事業の全体像を漏れなく発想・分析するフレームワーク

バランストスコアカードとは?

最近、事業者に対して技術指導をする公務員のかたがたを相手に、経営指導の研修をしました。
「技術指導だけでは必ずしも経営がよくなるとは限らないので、経営全般についても理解・評価ができるようになろう」という目標のもと、簡単な経営分析を行う研修です。
時間が限られた研修なので、伝える情報をかなり取捨選択しました。

そうした中で、経営の全体像をとらえるための手法として、「バランストスコアカード」を紹介しました。

ビジネスを考える枠組みにはほかにもビジネスモデルキャンバスやリーンキャンバスやピクト図解など様々にありますが、個人的にはこのバランストスコアカードが使いやすく感じていますし、実際にしばしば活用しています。
今回はそのバランストスコアカードについて簡単に紹介してみます。

バランストスコアカード(「バランススコアカード」と書かれることも多いですが、英語ではBalanced Scorecardなので私は「バランストスコアカード」と表記します)は経営全体を「財務」「顧客」「業務プロセス」「学習と成長」の4つの視点から考える枠組みです。
見た目としてはこの4つの視点がこの順に上から並んでいるだけなので、横に3本線を引いて紙を4分割するだけでできるシンプルな枠組みです。
以下のような見た目をしています。

4分割したそれぞれの視点のところに、その視点に当てはまる目標や実施事項を書いていきます。

バランストスコアカードで事業を考えるステップ

財務の視点と顧客の視点

財務の視点から順番に考えていくのがポイントです。
たとえば、ある飲食店が、財務の目標を「営業利益500万円」とし、これを分解して「売上5000万円」「コスト4500万円」という目標を設定したとします。
経営とは社会に対する貢献です。
売上を確保するには、顧客に対して何らかの価値を提供しなくてはいけません。
この意味で、財務の視点の隣に顧客の視点があります。

「売上5000万円」という財務の視点の目標に対して、顧客の視点にて、たとえば「客単価2000円」「顧客数25000人」という目標を設定したとします。
このように、大きな目標をより具体的な目標にブレイクダウンしていくわけです。

なお、コスト削減などの取り組みは必ずしも顧客の視点と関連しないこともあるので、その場合は財務の視点から一足飛びに業務プロセスの視点に移ります。

業務プロセスの視点

顧客に価値を提供するためには、何かしら具体的なアクションをとらねばなりません。
そのため、顧客の視点の隣には業務プロセスの視点があります。
業務プロセスの視点において、「具体的にどのように顧客に価値を提供するか」を考えるわけです。

たとえば「顧客数25000人」という目標を達成するために「リピーターを増やす」という目標があり得ますし、そのために「ポイントカードを設ける」「アプリをつくる」「ターゲット顧客が集まる場所にチラシを置いておく」などの具体的なアクションが考えられるかもしれません。
このように、業務プロセスのあたりから、目標だけではなくて具体的な行動が現れてきます。

学習と成長の視点

さて、業務プロセスの中で設定した行動がすべて実施できるようであれば、問題ありません。
しかし実際にはそのようなことはありませんし、できることだけやっていては向上しません。
そこで最後に現れるのが学習と成長の視点です。
やるべきだけれども今はできないことを、これからできるようにしていこう、というわけです。

たとえば「チラシを置いておく」というアクションをとりたいけれどもどのようなチラシをつくるべきか分からない、ということでしたら、「デザインを学ぶ」とか「サンプルチラシを作成してターゲットに評価をもらう」といったようなアクションが有効でしょうし、場合によっては「デザイナーを探す」というような外注を検討するかもしれません。

バランストスコアカードがロジカルな経営を可能にする

このように財務の視点から学習と成長の視点までをロジカルにつないでいけるのが、バランストスコアカードの強みです。
「売上や利益の目標はあるが具体的な実行計画がない」とか「新しい改善に取り組み始めたけれどもどのくらい財務上のインパクトが見込めるのかわからない」といったように、目標と手段の片方だけしかなかったり、両者のつながりが曖昧だったりすることはよくあります。
バランストスコアカードを用いて、「財務上の目標は○○」「それを実現するために○○なお客さんに○○を提供する」「そのために具体的には○○を実施する」「しかし今は実施できないことがあるから、○○ができるようになるために○○に取り組む」といった形で目標と手段をロジカルにつないでいけます。

バランストスコアカードを用いることの主なメリットは以下のようなものです。

  • 目標を達成するための具体的な手段を考えることができる
  • 反対に、取り組もうとしている改善策などが本当に顧客への価値提供や財務の改善に結びつくのかを検討しやすくなる
  • 従業員や株主などのステークホルダーに対して「どのような目標に対してどのような行動をとるのか」を論理的かつ視覚的に説明できる

自身の事業を検討するうえでも、他社の事業を分析するうえでも使い勝手のよいフレームワークなので、ぜひお試しください。

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