計画を立てよう①:顧客開拓:一茎農業経営入門5

農業を通してどのような顧客に貢献するか、計画しよう

前のページ「方針を決めよう」では、バランストスコアカード(BSC)を使って経営全体の方針を4つの視点で整理しました。財務の視点で目標を置き、顧客の視点で誰にどんな価値を届けるかを考え、業務プロセスの視点で何を実行するかを考え、学習と成長の視点で何をできるようにするかを考えました。

ここからは、その方針を具体的な計画に落としていきます。ページ5からページ9までは、顧客開拓、生産性改善、組織開発、バックオフィス業務改善、財務管理という5つの領域に分けて、計画の立てかたと改善の主要な方法を説明します。

最初に取り上げるのは「顧客開拓」です。顧客開拓というと、SNSを始めること、直売所に出すこと、飲食店に営業すること、チラシを配ることなどを思い浮かべるかもしれません。もちろん、それらは顧客開拓の手段です。しかし、手段から考えると、ページ4で説明したように、目的地が曖昧なまま乗り物を選ぶことになりがちです。

顧客開拓の計画で最初に考えるべきことは、「どの顧客に、どの価値を届け、どのくらいの売上と利益につなげるのか」です。

よい農産物をつくることは大切です。しかし、よい農産物をつくるだけでは、経営は安定しません。その価値を必要としている顧客に知ってもらい、買ってもらい、できれば継続して買ってもらう必要があります。顧客開拓とは、そのための一連の流れを設計し、行動することです。


目次

顧客開拓の計画は売上目標から逆算する

顧客開拓を考えるときに、いきなり「どこに営業するか」「何を投稿するか」から始めるかたは多いです。しかし、その前に確認すべきことがあります。それは、ページ2で考えた所得・利益の目標や、ページ3で考えた損益モデルと、顧客開拓の計画がつながっているかどうかです。

たとえば、営業利益をあと300万円増やしたいとします。そのために、売上を500万円増やす必要があると分かったとします。では、その500万円は、どの顧客から、どの商品で、どの販路を通じて得るのでしょうか。

ここが曖昧なまま「SNSを頑張る」「飲食店を開拓する」と言っても、計画としては弱いです。SNSの投稿数が増えても、必要な顧客に届かなければ売上にはつながりません。飲食店に営業しても、必要な取引額を実現できる相手でなければ、目標達成には届きません。

顧客開拓は「新しい売上の設計」

顧客開拓とは、単に新しいお客さんを増やすことではありません。目標としている売上・利益を実現するために、「どのような顧客との関係をつくるか」を設計することです。

たとえば、同じ500万円の売上増でも、次のように中身はまったく違います。

顧客開拓の方向計算例年間売上
飲食店との継続取引1店あたり月4万円 × 10店 × 12か月480万円
個人向け定期便1世帯あたり月4,000円 × 105世帯 × 12か月504万円
直売所・イベント販売1人あたり年10回 × 1回2,000円 × 250人500万円

どれも500万円前後の売上をつくる計算ですが、必要な努力は大きく異なります。飲食店との継続取引なら、10店との関係を深めることが中心になります。個人向け定期便なら、100世帯以上に継続して買ってもらう仕組みが必要です。直売所やイベント販売なら、何度も買いに来てくれる地域の顧客を増やす必要があります。

このように数字にしてみると、「顧客開拓」と一口に言っても、実行すべきことが違うと分かります。すべての販路を同時に狙うと、準備が十分にできず、また、顧客に選ばれるような商品やサービスに仕立て上げることができず、かえって販路開拓はうまくいかないものです。だから、方針を立てたら、その方針に沿って経営資源を集中的に投入するべきです。

市場出荷と顧客開拓は、得るものと失うものが違う

ところで、農業には農協出荷や市場出荷という優れた仕組みがあります。これらの仕組みを使えば、自分で顧客を探さなくても売上を確保できます。これは農業経営にとって大きな強みです。

一方で、自分で顧客を開拓する場合は、価格や商品設計や取引条件をある程度自分で決められるようになります。地元飲食店向けに規格をそろえる、子育て世帯向けに栽培履歴を分かりやすく伝える、贈答向けに包装を整える、というように、顧客に合わせて価値をつくり込めます。

ただし、顧客開拓にはリスクもあります。顧客を見つける手間がかかります。商談に時間もかかります。相手に選ばれなければ売上は立ちません。さらに、顧客を絞りすぎると、その顧客層だけでは十分な売上規模にならないこともあります。

たとえば、地元の小さな集落だけを対象に直売を伸ばそうとしたとします。仮に対象となる世帯が300世帯しかなく、そのうち100世帯に毎月買ってもらわなければ目標売上に届かないとしたら、かなり難しい計画になるでしょう。一方、対象を近隣市町村まで広げると顧客候補は増えますが、そのぶん「地域の顔なじみ」という強みは弱まり、一世帯あたりの販路開拓コストは大きくなります。

顧客を広げればよいわけでも、絞ればよいわけでもありません。大事なのは、目標売上に届く十分な広さがあり、なおかつ自分たちが選ばれる理由をつくれる狭さにすることです。

顧客開拓計画に入れる5つの項目

顧客開拓の計画には、少なくとも次の5つを入れてください。

  • 売上目標:顧客開拓によって、いつまでにいくらの売上・利益をつくるか
  • 対象顧客:誰に売るか。できるだけ具体的な顧客像にする
  • 提供価値:その顧客が何を理由に選ぶか
  • 接点づくり:その顧客にどこで知ってもらい、どこで会うか
  • 商談・販売の流れ:知ってもらった後、どのように購入・契約につなげるか

この5つがそろうと、売上目標から逆算し、顧客を選び、価値を伝え、接点をつくり、商談や購入につなげる一連の販売計画になります。


マーケティングとセールスを使い分ける

顧客開拓の計画を立てるうえで、まず整理したいのが、マーケティングとセールスの違いです。どちらも売上につながる活動ですが、役割が違います。

マーケティングとは、「顧客の課題を理解し、その課題を解決する商品や体験を設計し、それを必要としている人に知ってもらう仕組みをつくること」です。ページ3では、マーケティングには「顧客価値創出」と「顧客認知獲得」の2つがあると説明しました。つまり、選んでもらえる商品をつくることと、知ってもらうことの両方です。

セールスとは、「すでに接点のある相手に対して、相手の課題を聞き、自分の商品がその解決策になりえるかを伝えること」です。飲食店との商談、直売所での接客、産直サイトでの問い合わせ対応、卸業者との価格交渉などがここに入ります。

マーケティングは、まだ会っていない顧客のために

マーケティングと聞くと、広告宣伝やSNS投稿を思い浮かべるかたが多いかもしれません。しかし、広告宣伝はマーケティングの一部にすぎません。宣伝する前に、そもそも誰にとって価値がある商品なのかを考えなければなりません。

たとえば、同じトマトでも、顧客によって価値は変わります。

  • 飲食店にとっては、味の個性、規格の安定、欠品しないことが価値になるかもしれません
  • 子育て世帯にとっては、安心感、食べやすさ、買いやすさが価値になるかもしれません
  • 贈答用の顧客にとっては、見た目の美しさ、パッケージの印象、物語性が価値になるかもしれません

この違いを考えずに「うちのトマトはおいしいです」と発信しても、顧客には届きにくいです。顧客は「おいしいトマト」を探しているのではなく、「自分の状況に合う価値」を探しています。飲食店ならメニューづくりに役立つこと、家庭なら食卓で使いやすいこと、贈答なら相手に喜ばれることが大事なのです。

マーケティングは、このような顧客ごとの価値の違いを整理し、商品や伝えかたに反映する活動です。

セールスは、目の前の顧客のために

一方、セールスは目の前の相手とのやりとりです。ここで大事なのは、「売り込む」ことではありません。相手の事情を理解し、その相手にとって本当に役に立つなら提案することです。

農業では、相手によって聞くべきことが変わります。飲食店なら、メニュー、仕入れ頻度、必要な規格、欠品時の困りごと、納品時間などが重要になるでしょう。小売店なら、売場づくり、価格帯、パッケージ、棚もち、発注単位が重要かもしれません。個人消費者なら、味、安心感、保存しやすさ、注文のしやすさ、受け取りやすさが重要かもしれません。

相手の課題を聞かずに商品説明だけをしても、相手にとっては「自分のための提案」にはなりません。よいセールスのためには、商品を詳細に説明するより先に顧客を理解することが必要です。

ただし、マーケティングとセールスは別々の活動ではありません。むしろ、セールスの場で聞いたことが、次のマーケティングを改善します。

商談や販売現場では、顧客からいろいろな反応が返ってきます。

  • 価格が高い
  • 量が多すぎる
  • もう少し小さい規格がほしい
  • 配送曜日が合わない
  • 栽培方法はよいが、パッケージが分かりにくい
  • 味はよいが、メニューに使うには形がそろっていない

こうした感想や意見は、商品・価格・包装・配送・発信内容といったマーケティングの内容を見直す材料です。

あらゆる他者の言葉をマーケティングに活かすつもりで行動してみてください。そのためには、商談の後に、「誰が、何に反応し、何を理由に買ったか、または買わなかったか」を記録しておきます。記憶だけに頼ると、都合のよい反応だけを覚えてしまいます。記録があれば、後から見返して、共通する課題を発見できます。

マーケティングで仮説をつくる。セールスで顧客に会う。反応を記録する。その記録をもとに商品や伝えかたを直す。このサイクルが回り始めると、顧客開拓は少しずつ上達していきます。


顧客像を具体化する

顧客開拓でよくある失敗は、「お客さん」を大きく捉えすぎることです。「地域の人」「飲食店」「健康志向の人」「子育て世帯」といった言葉は、最初の分類としては使えます。しかし、そのままでは計画にはなりません。

同じ飲食店でも、高級店、地元食材を売りにする店、量を重視する店、日替わりランチを出す店では、求める農産物が違います。同じ子育て世帯でも、価格を重視する家庭、安心感を重視する家庭、時短を重視する家庭、子どもの食育を重視する家庭では、選ぶ理由が違います。

顧客像を具体化する目的は、「その人にとって何が価値なのか」を考えやすくすることです。

ペルソナは一番になるための仮説

マーケティングでは、具体的な一人の顧客像を描くことがあります。これをペルソナと呼びます。ペルソナとは、ターゲット顧客を具体的な一人の人物として描いたものです。年齢、家族構成、仕事、日々の行動、情報源、困りごと、買い物のしかたなど、そのペルソナがあたかも実在の人物であるかのように、詳細なプロフィールを設定します。

なぜ、具体的な一人の人を想像する必要があるのでしょうか? ページ3の内容を思い出してください。あなたがトマトを買いにスーパーに行ったとします。スーパーにはいろいろな種類のトマトが売られています。仮に10種類のトマトが売られているとします。

あなたはそのうち何種類を買いますか?

ふつうは1種類、多くても大玉とミニを1種類ずつ、でしょう。サラダに入れるなら生で食べておいしそうなもの、子どもの弁当に入れるならミニ、健康に気をつかっているなら高リコピンの品種、とくにこだわりがなければ一番安いもの、といったように、目的にもっともよく適ったものだけを選びます。その他の8種類か9種類の商品を買うことはありません。

同様に、新しいトラクターを購入する場面を想像してみてください。代理店に行くと各メーカーの最新機種から中古まで、複数のトラクターが並んでいます。さて、何台買いますか? ふつうは1台だけでしょう。自農園の平均的な圃場の大きさや使っているアタッチメント、メーカー、それに価格など、いろいろな条件を加味したうえで、一番よいものだけを買うはずです。

顧客は自分にとっての一番だけを選びます。つまり、顧客に買ってもらうには、顧客にとっての一番にならなければなりません

これはBtoBのビジネスでも同じです。スーパーマーケットのバイヤーは、提案を受けた商品を何でも仕入れるわけはありません。その商品にすでに市場以外の仕入先があるか、価格はいくらか、リードタイムは何日か、仕入可能な時期はいつからいつまでか、といった条件を検討して、少なくとも特定の時期については、需要を満たすことのできる最低限の農家とだけ取引するはずです。バイヤーに選ばれるには、バイヤーの選択肢の中で一番にならなくてはならないのです。

顧客にとっての一番になることを考えるには、顧客のニーズが具体的なものである必要があります。1歳の息子がいる母親と、一人暮らしをしている男子大学生は、トマトを選ぶ基準が大きく異なるはずです。顧客に選ばれる商品や売りかたを考えるには、そもそも顧客がどのような人なのかが決まっていなければならないのです。

たとえば、次のように描いてみます。

  • 年齢:31歳
  • 性別:女性
  • 家族構成:夫(31歳)、子(1歳)
  • 仕事:図書館司書、育児休業を終えて3か月
  • 野菜購入先:職場からの帰り道にあるスーパー
  • 情報源:ネット検索、ニュースアプリ、Instagram、子育て情報誌

このような感じで、何を求めているのか、どのような情報に触れているのかといったことを、具体的に考えてみます。そうすると、単に「子育て世帯に売る」と考えるより、何をどのように改善すべきか見えやすくなります。

なお、ペルソナをつくろうとすると、自分の商品にとって都合のいいペルソナ像になりがちです。すると計画上の売上や利益の数字は大きくなりますが、実際にやってみても期待通りに販路を獲得できないという問題にぶつかってしまいます。

そうならないようにするためには第三者、できればそのペルソナ像に近い人に率直な意見を求めることが大事ですが、いまは、ペルソナづくりにAIを活用するという手もあります。商品情報などは一切与えず、年齢や性別や居住地といった最低限の条件だけ指定して生成AIにペルソナを設定してもらうのです。

もちろん生成AIのアウトプットにも偏りはあります。しかし、自分の知識の範囲にない情報も含めてペルソナをつくってくれるので、その分人が考えるよりも実践的・客観的なペルソナになりやすいです。たとえば、20代の女性になりきって考えてと言われても、私にはとても無理です。どんなことが流行っているのか、どんなメディアに触れているのかなど、ほとんど分かりません。お客さんになりきって考えることは大事ですが、お客さんを捏造してしまってはいけません。生成AIは、そうならないための便利なツールです。

顧客の行動の流れを見る

顧客像を描いたら、その人が商品を知り、興味をもち、買うまでの流れを考えます。この流れはマーケティングの参考書では「カスタマージャーニー」と呼ばれているものです。

まず、いったんは取引につながるかどうかといったことを棚に上げて、ペルソナが日常や仕事の中でどのような経験をするかを考えてみてください。たとえば、先ほどの1歳の子どもがいる母親なら、朝5時くらいに子どもの泣き声で目を覚ますかもしれません。子どもは泣き止んだけれども二度寝するような時間でもないので、眠たいなと思いながら自分たち大人用の朝食と、子ども用の離乳食を用意し始めます。つくりおきして冷凍しておいた離乳食をレンジで温めながら、スマートフォンでなんとなくSNSを眺めます。タイムラインには子育てのコツを面白おかしく紹介する動画が流れてきます。

……といった感じで、朝目が覚めて、仕事をして、家事をして、また眠るまでの一日を想像してみるのです。そして、そのペルソナがどのようなことを喜んだり、逆に悲しんだり、不満を感じたりするかを想像します。ニーズは、そうした感情の起伏のあるところに眠っているものです。そこを起点に、そのニーズを満たすためにどのような商品をどのように届けるかを考えることで、マーケティングやセールスの道筋が見えてくるかもしれません。

他に、顧客が商品やサービスを選択するステップから考える方法もあります。この方法だと多少ご都合主義の計画になりやすいですが、具体的なアクションを思いつくためには向いています。例としては、以下のように顧客の購買行動を5つのステップに分け、そのそれぞれの段階にどのようにアプローチするかを考えます。

段階顧客の状態接点の例用意するもの
認知まだ知らないSNS、チラシ、知人の紹介何を届ける農家か一目で分かる発信
興味少し気になるプロフィール、商品ページ、口コミ価格、内容量、受け取り方法の説明
比較買うか迷う他の宅配、スーパー、直売所選ぶ理由、安心材料、利用者の声
購入試してみる注文フォーム、店頭、DM迷わず注文できる手順
継続もう一度買うメール、LINE、次回案内定期便、季節の案内、感想の聞き取り

この表を見ると、SNS投稿だけでは足りないことが分かります。SNSで知ってもらっても、商品内容が分からなければ買えません。商品内容が分かっても、注文方法が面倒なら離脱します。一度買っても、次にどう買えばよいか分からなければ継続しません。

これはBtoCの例ですが、BtoBでも同じように、購入の意思決定をする人がどのような一日を過ごすのか、取引先を決めるうえでどのような段階を踏むのかと考えることは有益です。

顧客の課題に沿った解決策をつくる

顧客像を描いたら、どのように顧客の課題に応えるかを考えます。顧客の課題に対応していないものを示しても、顧客にとっての一番になることはできません。顧客が今何を選んでいるのか、他にどんな選択肢をもっているのかといった、いわゆる競合を意識しながら、どのような価値をどのように届ければ顧客にとっての一番になれるかを考えます。

たとえば、飲食店のオーナーシェフは以下のような課題を抱えているかもしれません。

顧客の困りごと提供する解決策
急な欠品があるとメニューを変えざるをえない2週間先まで供給可能量の目安を提示する
規格がばらつくと仕込みに想定以上に時間がかかる収穫を希望のサイズとなるタイミングに極力合わせる
仕入れ先からの連絡が遅いと不安になるLINEやSMSでも問い合わせを受け付ける
季節性のあるレシピを考えるためのインスピレーションがほしい生産可能な食材リストを見ながら契約栽培の打ち合わせをする

この対応関係が明確になると、営業資料に何を書くべきか、商談で何を聞くべきか、業務プロセスで何を整えるべきかが見えてきます。ページ4で説明したBSCの「顧客の視点」と「業務プロセスの視点」が、ここで具体的につながるわけです。


顧客と商品に向き合うためのセールスレター

ここまで、マーケティングの基本的な手法を紹介してきました。少し抽象的だと感じられたかもしれません。顧客像と提供価値を具体的に考えるためにぜひ一度とりくんでほしいものがあります。セールスレターです。

セールスレターという言葉を聞くと、新聞の折り込みチラシやポスティング広告、ダイレクトメールといったものを思い浮かべるかもしれません。それらも確かにセールスレターの一種ですが、ここでは、実際に見込み客に送るかどうかは別にして、お客さんに届けるべきメッセージを練習としていったん文章にしてみたもの、といったくらいの気軽なものだと考えてください。

セールスレターの価値は、完成した文章そのものだけにあるわけではありません。むしろ、セールスレターを書く過程に価値があります。書こうとすると、自分の商品が誰のどんな課題を解決しているのかを、真正面から考えざるをえないからです。

セールスレターを書こうとすると、いくつもの問いに文章として明確に答える必要があります。

  • この商品は誰のためのものか
  • その人は何に困っているのか
  • なぜ他の商品ではなく、自分の商品を選ぶ必要があるのか
  • どんな証拠があれば信頼してもらえるのか
  • 買った後、顧客はどのようによい状態になるのか
  • どうすれば迷わず購入できるのか

これらに答えられない場合、顧客理解や商品設計がまだ曖昧なのかもしれません。

「うちの商品はおいしい」「こだわってつくっている」とは言えても、「どの顧客の、どの困りごとに対して、どう役に立つのか」が言えないことはよくあります。その状態で発信や営業をしても、顧客は「自分にとっての一番だ」とは感じにくいものです。

セールスレターは、顧客に向けた文章であると同時に、自分の商品を見直すための鏡です。

セールスレターの9要素

セールスレターを書くうえでは、有名なマーケターである神田昌典の著書が大変参考になります。ここでは、その内容を踏まえつつ、農業でも活用しやすいようにしたフレームワークを紹介します。これは当社が経営研修の演習としてよく農業経営者のかたがたに取り組んでもらう枠組みです。「こんなこと考えたことなかった」と頭を抱えるかたも多いですが、何とかアウトプットをしてみると、単に売り文句を考えられるというだけでなく、そもそも何のために経営をしているのかといった理念的なところまでさかのぼって検討できたと、みなさんすっきりした顔をされます。

このフレームワークは、以下の9つの要素について考えることでセールスレターを作成するものです。

  1. 顧客の課題:読者が抱えている困りごとから始める
  2. 語り手:誰が、どの立場から語っているかを感じられるようにする
  3. 読者の明確化:誰に向けた商品なのかを示す
  4. 解決策・コンセプト:商品が課題をどう解決するかを印象的な表現で短く伝える
  5. 証拠・根拠:数字、実績、顧客の声、栽培方法などで信頼を補強する
  6. 具体的な内容:顧客が課題を解決するための商品・サービスの具体的な特徴を説明する
  7. メリット:その商品・サービスによってどのような理想的な状態が生まれるのかを描く
  8. 提案:価格、数量、期間といった取引条件を明確に示す
  9. 行動:問い合わせ、予約、購入など、顧客が次に何をすればよいかを分かりやすく示す

この順番に沿って書いていけば、おのずとセールスレターの体裁ができあがるはずです。実際に見込み顧客に送るセールスレターにする場合は、顧客や商品に合わせて要素を足し引きしたり順番を入れ替えたりしたほうがよいでしょうが、まずはこの9項目をしっかり考えてみてください。

セールスレターを送らないとしても、書くことが商談の準備になります。商談で相手に話す内容は、基本的にはセールスレターと同じだからです。

飲食店に営業するなら、最初から「この品目があります」と説明するより、「仕入れで困っていることはありますか」「季節メニューで使いやすい食材を探していますか」と聞くほうが、相手の話を引き出しやすいです。そのうえで、「もし旬の食材を安定して仕入れたいなら、うちでは週ごとの収穫予定を共有できます」と伝えれば、相手の課題と自分の商品がつながります。

セールスレターを書いておくと、こうした商談の流れを事前に整理できます。文章をそのまま読み上げる必要はありません。まずはしっかりと顧客の話を聴いたうえで、セールスレターに書いた内容のうち関係が深いものを、より丁寧に説明していくといいでしょう。

落とし穴は、商品の自慢から始めること

セールスレターでよくある失敗は、自分の商品や農園の自慢から始めることです。

「農薬を減らしています」「土づくりにこだわっています」「朝採れです」「受賞歴があります」。どれも大切な情報です。しかし、それが顧客の課題とつながっていなければ、顧客にとっては無駄な時間です。

事業をしていると、営業の電話がかかってくることがあると思います。その中には、いきなり聞いたこともない商品やサービスについて説明をはじめられることがあります。そんな電話を受けたら、「時間の無駄だ」と思いませんか? 売る側の立場に立ったら、同じことをしないように心がけたいものです。

ちなみに、架電営業のコツとして「まず相手が関心をもつかどうかを確認して、関心をもたないならすぐに電話を終える」というものがあります。ニーズを満たせない相手にいくら長く説明をしても契約をとることはできません。相手の機嫌を損なうし、自分も時間を無駄にしてしまいます。いいことは何もありません。相手に自分の商品で貢献できないと思ったら、手間をとってくれたことへのお礼を告げて、すぐに電話を切ったほうがいいのです。

さて、話をセールスレターに戻します。顧客が知りたいのは、「それが自分にどう関係するのか」です。だから、商品の特徴を書くときは、必ず顧客にとっての意味に変換してください。

  • 農薬を減らしている → 子どもに食べさせるときの安心材料になる
  • 朝採れで出荷する → 飲食店で香りや食感を活かしやすい
  • 規格をそろえている → 仕込み時間を読みやすい
  • 栽培履歴を残している → 取引先に説明しやすい

この変換ができると、セールスレターは宣伝文ではなく、顧客への提案になります。もしこのように顧客にとっての価値に変換できないとしたら、その特徴があなた自身にとってどんなに価値があると思えるものであっても、顧客に選ばれる理由にはなりません。


知ってもらうための媒体を選ぶ

顧客に価値を届けるには、まず知ってもらわなければなりません。知ってもらうための方法はいろいろあります。主要なものを押さえたうえで、ペルソナとして設定した顧客に知ってもらうために適切な媒体を選びます。

SNS運用は「誰に何を届けるか」から始める

今の時代、広告宣伝の手段として筆頭に挙がるのはSNSでしょう。事業者が自ら発信できるという点で、SNSは非常に自由度の高い手段です。農業には生産現場の様子、季節感、生産者の顔、収穫のタイミングなど、発信しやすい素材がたくさんあります。

しかし、SNSでたくさんのフォロワーを獲得するのはなかなか大変です。それに、たくさんのフォロワーがいるからといって、それが事業の成功につながるというわけでもありません。

たとえば、栽培のコツなどを農家の視点で分かりやすく伝えることでたくさんのフォロワーを獲得できたとします。これは一見いいことのようですが、「何のためにフォロワーを増やすのか」という目的次第では、無意味なことかもしれません。こういうアカウントをフォローするのは家庭菜園をしている人や新規就農者でしょうから、もしSNS運用の目的が個人のお客さんを増やすことだったとしたら、適切なフォロワーを獲得できているとは言い難いです。

SNSで成果が出ない場合、原因の多くは誰のどんな行動を促したいのかが定まっていないことです。「日々の農作業を投稿する」「収穫した野菜の写真を投稿する」といった手段の先に誰のどんな行動を期待しているのかが定まっていなければ、誰も何の行動もしてくれないでしょう。

そこで、他の宣伝方法でも同じですが、SNS運用を始める前に、次の3つを決めてください。一度セールスレターを作成していれば、すぐに決められるのではないかと思います。

  • 誰に届けるか:飲食店、子育て世帯、贈答利用者、地域住民など
  • 何を届けるか:安心感、季節感、使いかた、安定供給、贈り物としての魅力など
  • 次に何をしてほしいか:問い合わせ、予約、直売所来店、EC購入、見学申込など

たとえば、地元飲食店に知ってもらいたいなら、収穫風景だけでなく、「来週出荷できる品目」「規格」「使いやすいサイズ」「少量での試験納品が可能か」といった情報のほうが役に立つかもしれません。

子育て世帯に届けたいなら、農作業の専門的な説明よりも、「子どもが興味をもちそうな面白い品種」「忙しい平日に使いやすいセット内容」「栽培履歴の分かりやすさ」が重要かもしれません。

発信内容は、自分が見せたいものではなく、顧客が知りたいことから考えます

また、そもそもの話ですが、お客さんとして設定したペルソナがそもそもSNSを利用していなそうな場合や、近隣住民など物理的に近い人々を顧客として想定している場合は、SNSは適切な手段ではありえません。顧客に知ってもらうためには、顧客が目にする媒体を選ぶことが必須です。

媒体は顧客の生活に合わせて選ぶ

媒体はSNSだけではありません。ウェブサイト、ブログ、LINE、メール、チラシ、直売所のPOP、地域情報誌、展示会、商談会、口コミ、紹介など、顧客との接点はたくさんあります。

媒体を選ぶときは、次の3つを確認します。

  • 顧客がその媒体を使っているか
  • 商品の価値を伝えやすい形式か
  • 運用にかかる時間や費用に見合うか

ブログやウェブサイトは、栽培方法、商品説明、注文方法などを詳しく伝えるのに向いています。LINEやメールは、すでに関係のある顧客に季節商品や予約案内を届けるのに向いています。チラシや直売所のPOPは、地域の顧客やスマートフォンをあまり使わない顧客に届きやすいです。

顧客の生活や仕事の中に自然に入り込むにはどの媒体が適切か、考えてみてください。

広告宣伝は効果を測る

広告や宣伝は効果を検証することが必須です。たとえるなら、生産する品種を検討するとき、その品種がもともと生産していた品種よりも収量や品質の点で優れているかどうかを評価しなければ、品種を変えるべきかどうかを合理的に判断することはできません。

広告・宣伝はお金がかかるもの。うまくいけば100万円の広告費が200万円の利益を生むこともあれば、100万円の広告費をかけた結果赤字になってしまうこともあります。利益を残せる広告になっているのかどうかを常に評価し、改善していくことが大事です。

広告宣伝の指標はいろいろありますが、最低限、「広告をしたうえでいくらの売上を実現できれば利益が残るのか」を把握しておきましょう。このとき、ページ1で計算した「変動費」や「限界利益」が大事な役割を果たします。

仮に、広告したい商品1つあたりの販売価格が1000円で、変動費が600円、限界利益が400円だとします。限界利益率(販売価格に対する限界利益の割合)は40%です。

この商品の広告に10万円かけるとします。すると、損益分岐点を求めたときと同じ理屈で、この10万円の広告費を回収するには商品をいくつ販売すればいいかが計算で求められます。具体的には、10万円を400円で割って、

広告費回収販売数量=100,000÷400=250(個)

というように、広告を通して250個の商品を売れたなら、広告費は回収できることになります。そのときの売上高は、商品1個が1000円なので、25万円です。慣れているかたは、10万円を限界利益率の40%で割って25万円の広告費回収売上高を求めてもよいです。

この、250個、25万円というのが、10万円の広告費をかけるときの最低ラインになります。広告費以外の固定費も回収し利益を残すには、実際にはもっと大きな売上を実現する必要があります。余裕をもって利益を残せるラインを目標として設定し、実際に広告をしてそのラインに達しないようだったら臨機応変に対策を打たなければなりません。


商談で価値を届け、学ぶ

ネット通販のようにマーケティングだけで売上が立つビジネスモデルもありますが、とくにBtoBの場合は、契約に向けた人対人のやりとりが必要になります。飲食店、小売店、加工業者、卸業者との取引では、商談が顧客開拓の中心です。個人向け販売でも、問い合わせ対応、直売所での会話、定期便の案内など、小さな商談は日々発生します。

商談の目的は売ることですが、そのためには相手の課題を聞き、自分の商品が役に立つかどうかを確かめ、適切な提案をすることが必要です。もしそれができない場合も、その商談の機会を、今後の商品改善や発信改善につながる情報を得るために活用する姿勢が成長のための秘訣です。

商談は顧客理解の場

商談で最初にすべきことは、相手の話を聴くことです。自分の商品説明から始めると、相手の課題が分からないまま話が進んでしまいます。

飲食店との商談なら、たとえば次のようなことを質問します。

  • 今、どのような食材の仕入れで困っているか
  • どの品目で欠品や品質のばらつきが起こりやすいか
  • どのくらいの規格・量・頻度だと使いやすいか
  • 新しい食材を採用するとき、何を確認するか
  • 価格、品質、安定供給、物語性のうち何を重視するか

小売店なら、売場での動き、価格帯、パッケージ、発注単位、納品条件を聞く必要があります。消費者なら、購入頻度、保存のしやすさ、調理のしやすさ、希望する受け取り方法や支払い方法を聞く必要があります。

こうした質問によって、自分の商品が本当に相手の役に立つかが見えてきます。合わないと分かったら、無理に売らないことも大切です。合わない相手に売っても、継続しません。むしろ、自分たちが選ばれるべき顧客を見極めることが、長期的には顧客開拓の効率を高めます。

営業の流れを決めておく

営業は、気合いで飛び込むものではありません。基本的な流れを決めておくと、実行しやすくなります。

  1. 営業リスト作成:顧客候補をリストアップし、優先順位をつける
  2. 接点づくり:紹介、電話、メール、SNS、展示会などで連絡する
  3. 商談準備:相手の業態や課題を調べ、資料やサンプルを用意する
  4. 商談:相手の課題を聞き、自分の商品がどう役立つかを伝える
  5. 提案:価格、数量、納品頻度、支払い条件などを示す
  6. 振り返り:成約・見送りにかかわらず、理由を記録する

この流れを決めておくと、営業活動が属人的なものになりにくくなります。家族やスタッフに営業を任せる場合にも、「何を準備し、何を聞き、何を記録するか」が共有しやすくなります。

商談前に用意するもの

商談では、準備の質が信頼につながります。人の話を聞きつづけるのは退屈なので、最低限の情報を伝えたらあとは「質問されたら答える」というスタンスが効果的なことが多いです。そのためには、最低限の情報とは何なのかを顧客の視点に立って見極め、それを分かりやすく手短に伝えられるように準備することが大事です。

セールスの電話をとったときのことを思い出してください。最初の1分……どころか、最初の一言で、印象がおおかた決まってしまったのではないでしょうか?

商談の成功のためには、相手が集中して聴いてくれる最初の数分間に「もっと知りたい」と思ってもらえることが必須です。その数分間のために必要があれば、1時間でも2時間でもそれ以上でも時間をかけて、準備をしてください。

また、トークの内容を補強しつつ信用を獲得するために、商談前には、次のようなものを用意しておくとよいです。

  • 名刺
  • 農園や事業の簡単な紹介
  • 商品案内
  • 価格表
  • 商品サンプル
  • 連絡先と注文方法

数分間の凝縮されたメッセージも、口頭の言葉だけだとうまく理解されないまま流れていってしまうかもしれません。そうならないように、口頭で伝える内容を視覚的にも分かりやすく伝える資料を用意しておきます。それに加えて、実際に取引をするとなると必要になる情報を資料にまとめておくわけです。

展示会や商談会に出る場合は、農林水産省が公開しているFCP展示会・商談会シートのように、商品特徴、価格条件、物流条件、取引条件を整理する様式を参考にしてもよいでしょう。大切なのは、相手が「取引できるかどうか」を判断するための情報を、抜け漏れなく示すことです。

ただし、時間をかけて作成した資料は、ついつい説明したくなってしまいます。でも、資料に書いてある情報のすべてがお客さんにとって今すぐ必要なわけではありません。情報量が多すぎると、かえって印象に残りにくくなります。それに、読めば分かることを口頭で説明されるのは、時間の無駄だと思われかねません。

資料をつくるのは、商談の場で「言わなくても分かる」ことを増やし、「本当に今伝えるべきこと」に集中するためです。

資料をお客さんのところに持参したら、最初のトークに使う資料だけは使って、その他の資料に書いてあることの説明は省略しましょう。最初のトークで場が温まり、突っ込んだ質問が来たら、そのときに適切な資料を示せばよいのです。

断られた理由を記録する

せっかく商談をしても、うまくいくとは限りません。会社を訪問し応接室で行うような商談の場合は打率が高くなるものですが、商談会のような気軽に商談ができる機会の場合は、契約に至らないことのほうがはるかに多いでしょう。

こうしたとき、その理由を聞かずに終わらせるのはもったいないです。見送りの理由は、次の改善の材料になります。

  • 価格が合わない
  • 必要な量に足りない
  • 規格が合わない
  • 納品曜日が合わない
  • 既存の仕入れ先との関係が強い
  • 今は新しい食材を試す余裕がない

さまざまな理由がありえると思います。1件だけではたまたまかもしれません。しかし同じ理由が2回3回と繰り返されると、そこにかえって活路が見えてきます。価格で断られることが多いなら、価格に見合う価値の伝えかたが弱いのかもしれません。納品条件で断られることが多いなら、物流や受注の仕組みを見直す必要があるかもしれません。規格で断られることが多いなら、生産や選別の基準を変える必要があるかもしれません。

断られた商談は、今後の顧客開拓のための貴重な糧になります。


顧客開拓を実行計画に落とす

ここまで、顧客開拓に必要な考えかたを説明してきました。しかし、考えただけでは計画になりません。最後に、実行計画に落とし込みます。

まずは90日で小さく試す

顧客開拓は、最初から完璧な計画をつくるより、小さく試して早く学ぶほうが向いています。ページ3で説明したMVPと同じです。仮説をつくり、小さく試し、顧客の反応を見て修正します。

たとえば、飲食店向けに新しい販路を開拓するなら、最初の90日は次のような計画にできます。

期間目的実施すること見る数字
1〜2週目顧客候補を決める地元飲食店を30件リスト化し、優先順位をつける候補件数、優先度Aの件数
3〜4週目提案内容をつくる商品案内、価格表、サンプル提供条件を整える資料完成、サンプル準備数
5〜8週目接点をつくる10件に連絡し、商談または試食の機会をつくる連絡件数、返信件数、商談件数
9〜12週目反応を見る試験納品を行い、感想と条件を聞く試験納品件数、継続見込み件数

いきなり「顧客を3社獲得する」といった計画を立てても、具体的にどうすればいいのか見えてきません。そこで上記の表のように、途中の行動を段階的に書いていきます。

顧客開拓は時間がかかるものです。ご自身のことを考えてみてください。もともと付き合いのある資材店から別の資材店に切り替えようと思ったら、ちょっと億劫ではないですか? 最初に断られても、何かあったときに思い出してもらえるかもしれません。気長に、着実に、関係を築いてみてください。

顧客開拓の管理表をつくる

顧客開拓を継続するなら、簡単な管理表をつくることをお勧めします。システムを導入する必要はありません。最初はエクセルやグーグルシートで十分です。

管理表には次のような項目を入れます。

  • 顧客名
  • 顧客分類
  • 担当者
  • 連絡先
  • 初回接点の日付
  • 顧客の課題
  • 提案した商品
  • 反応
  • 次に行うこと
  • 次回連絡日
  • 見込み数量
  • 見込み単価
  • 見込み金額
  • 成約の確率
  • 結果
  • 成約・見送りの理由

このような一覧をもっておくと、目標としている売上をつくれそうなのかどうか、目標に至るために何を考えるべきなのか、いちいち迷わずに行動を進められます。

方針とずれていないかを確認する

顧客開拓の計画を立てたら、あらためて、ページ4でつくった方針を見返してみてください。方針との整合性はありますか?

  • 財務の視点:この顧客開拓は、目標としている利益・所得・売上につながるか
  • 顧客の視点:アプローチする顧客と提案する価値は、方針で決めた「誰に・どんな価値を」と合っているか
  • 業務プロセスの視点:その顧客価値を届けるための手段(広告宣伝やセールス)は適切か
  • 学習と成長の視点:マーケティング、営業、発信、顧客管理など、必要な能力を身につける計画があるか

ここでずれがあるなら、計画を直してください。たとえば、方針では飲食店への安定供給を重視しているのに、実行計画がSNSで個人向けに発信することばかりになっているなら、ずれています。個人向け販売を否定する必要はありませんが、今年の重点が飲食店なら、時間と労力の配分も飲食店向けに寄せるべきです。

ただし、顧客開拓について具体的に考えてみると、もともと立てていた方針のほうに無理があると気づくこともあるかもしれません。この場合は、難しい決断ですが、方針のほうを修正するほうがよいです。そのときは、必ず、方針を変えたこととその理由を、関係するメンバー全員にしっかり説明してください。

顧客開拓は次の計画につながる

まとめましょう。

まず、経営の課題を分析し(ページ1)、その課題を乗り越えた後の目標を設定しました(ページ2)。その目標を達成するために「誰に・何を・どのように」届けるのかというビジネスモデルと、それによってどのように所得・利益を生むのかという損益モデルを検討しました(ページ3)。さらに、バランストスコアカードの枠組みを使って、4つの視点から成長の道筋としての方針を立てました(ページ4)。

このページでは、その道筋をより具体的にするために、顧客の視点を中心とする顧客開拓についてお話ししてきました。このページで扱ったのは、バランストスコアカードのうち「顧客の視点」と、「業務プロセスの視点」のうちのマーケティング・セールスの部分です。

顧客開拓の計画は、単独では完結しません。顧客に商品を届けるには生産活動が必要ですし、生産の質を高めるには組織として成長していくことが大事です。また、顧客開拓は収支計画や予算といった財務面の計画とも連動するはずです。こうした計画の要素については、次のページ以降で論じていきます。


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