2026サンクスフェアという新潟市で開催された展示会にて、「経営コンサルからの農業経営支援の提案」というテーマで講演する機会をいただきました。実は私から提示したテーマは違うものだったのですが、諸事情によりこうした演台になっていました。しかし、内容自体は当初考えていたものです。
お呼びいただいたうえでの講演なので経営管理のテクニカルなことを中心にお話ししましたが、私としては、経営にとっては農業経営者自身の目的や夢のほうが大事で、それを確実なものにするためにテクニックが有益だ、というふうに捉えてもらえればなと思っていました。
以下、この講演の内容をダイジェストで紹介します。自己紹介などはしょったところが多いので、「なんでいきなりこんな話になるのか」と思われるところがあるでしょうが、ご了承ください。
「経営は爆発だ」
先ほど、私は昔フランスで仕事をしていたと言いましたが、その80年ほど前にパリで大活躍していた日本人がいました。岡本太郎です。岡本太郎の「芸術は爆発だ」という言葉がありますよね。芸術は、芸術家の心の中にある「どうしても表現したい」という衝動が現れたものだ、ということです。
ただ、自己表現の手段は芸術に限らないはずです。みなさんにとっての農業や経営も自己実現になるでしょうし、雇われて仕事をするのでなければなおさら、あるいは雇われて仕事をしているとしても、自分の人生の大きな部分を自分の目的に沿って使えないのは面白くありません。今回のテーマは経営ですが、経営についても「経営は爆発だ」と言ってもいい。経営とは、皆さんが「こうしたい」と思っていることを実現する営みです。
当社の農業経営コンサルティングでは「農業を舞踊に」というビジョンを掲げています。農業を自己表現として、舞踊のようなものにまで高めていく。そのためのお手伝いをしたいと思っています。数字も設備投資も、それ自体が目的ではありません。実現したい農業に近づくための道具です。
経営者に必要な3つのスキル
今日は時間が限られているので表面的な紹介だけですが、現代の経営者にとって重要で、当社としても力を入れているスキルとして、「マーケティング」「デジタル」「ファイナンス」の3つがあります。

マーケティングは、お客さんの課題を知り、お客さんが求める商品をつくり、お客さんの日々の中で認知してもらい、届けること。デジタルは、これまで難しかった仕事を簡単にする道具です。そしてファイナンスは、将来に向けて資産を増やすために、投資と資金調達を設計することです。
今回は農機の展示会ですから、ファイナンスの入口について話をします。ファイナンスというのは未来志向で資産を増やしていくための一連の活動です。ごく端的には、「資産を増やすのに貢献するような投資をする」ということが、ファイナンスの大きな仕事になります。もっと具体的に言えば、「この農機を買ったら利益は増えるのか?資金繰りはどう変わるのか?」といったことを予測し、計画し、実行することです。

まずは損益分岐点を知る
最初にやっていただきたいのは、決算書の費用を「変動費」と「固定費」に分けることです。面積や販売数量が増えると一緒に増える種苗費・肥料費・農薬費などの材料費や、荷造運賃手数料(梱包・包装資材、運送費、販売手数料)といったものが典型的な変動費。それ以外は、まず固定費と考えてみてください。
例えば、売上高2,500万円、販売数量100トンなら、平均単価は250円/kgです。変動費が1,500万円なら、150円/kg。差し引き100円/kgが、商品を1kg売るごとに残る「限界利益」です。
固定費が1,200万円なら、100円/kgの限界利益を12万kg分積み上げると固定費を回収できます。この利益が出る境目が「損益分岐点」です。ここまで分かれば、「最低限どれだけ売らなければならないか」を数字で考えられます。



農機投資の前後を比べる
たとえば700万円のトラクターを購入し、7年間で償却するなら、年間の減価償却費は100万円増えます。それだけを見れば、当然、利益は減ります。
しかし、投資というのは経営効率を高めるために行うものです。投資をすることによって、変動費や売上高にも影響があるはずです。たとえば、新しい農機で作業が速くなり、1kgあたりの変動費が150円から140円に下がるかもしれません。さらに、耕作面積を広げて販売数量を100トンから120トンへ増やせるかもしれません。固定費の増加、変動費の削減、販売数量の増加を一つの表に入れて、投資前と投資後を比べる。そうすると、その農機が利益を生むための条件が見えてきます。


数字を経営判断の「導火線」に
費用の分類だけなら、ざっくり15分でもできます。今回当社もブースを構えているので、やってみたいというかたはお立ち寄りください。
改善後のシミュレーションは、ちょっと時間がかかるかもしれませんが、当社がお手伝いする場合には30分から45分くらいで簡単なものはできます。これはオンラインの無料相談で対応している内容です。
こうして現状を整理、目標を設定したら、あとはその目標を達成するためのアクションと、達成度合いを評価するための段取りを考えます。これは30分くらいでもできると思います。
実際に行動したら、結果がどうか、計画を実行できたかなど、同じく30分くらいかけて振り返り、改善のためのアクションを考えます。PDCAというものですね。この毎月30分という時間の投資が、長期的には、大きなリターンとして返ってきます。
さて、最初にお伝えしたように、「経営は爆発だ」、です。爆発させたい思いを爆発させるためには、とくに経営という土俵においては、数字というものが大事な導火線になります。回収の見込みが立たない投資は論外ですが、多少のリスクをとっても目的の達成のために必要であれば、その投資は行うべきです。投資には必ずリスクがつきまといます。そのリスクを正しく評価するのが数字の役割です。
そして、何よりも大事なのが、その導火線の先でみなさんが何を爆発させたいのか。みなさんにとっての経営は、岡本太郎にとっての芸術のようなものであるべきです。経営によっていったい何を表現したいのか。できれば、それをあらためて確認するところから、はじめてみてください。